【トレード】運用手法(アプローチ)を変えることの意味
若くまだ経験の浅い運用者。
知識も経験も少ない中で
「こうなりたい」
「こういうトレードがしたい」
と考える。
でも実際にトレードを始めてみると思うようにいかないことばかり。
そして当初想像していたものと全然違う現実に直面することもあるだろう。
ファンダメンタルズ、テクニカル、バリュー、グロース、個別株式、派生商品…etc。
選択肢はいくつもあるのだから、知識や経験を重ねていく中で道を変えることも間違いではない。
自分自身もオプションディーラーから始まって、アービトラージもやったし、個別株式のアウトライトや、ロングショート、テクニカルベースのシステム・トレード、様々なアプローチに取り組んだ経験がある。最後は先物のアウトライトでバタバタやってたイメージだけどw
マーケットが様々な変化をしていく中で、それに適応していけるだけの手段を持つことは決して悪いことじゃない。
ただ気をつけて欲しいことがある。
どのアプローチに取り組むにしても、ただうまくいかないから変えるというだけの発想ではいけない。
同じようなアプローチでうまくいっている人もいるはずだ。
「なぜうまくいかないのか?」
その検証と分析が出来ていれば、恐らく改善も出来るだろうしね。
特に最初の頃なんて、修正すべき点だらけのはず。
根本的なところに問題があったまま、目先のやり方変えたところできっと思うように効果は得られない。
一つ一つのトレードを振り返り、何をどう考えてそうトレードしたのか?
何をどう見て、どう考えればもっといいトレードが出来たのか?
そこをしっかり向き合う地道な努力の繰り返しでしか成長はできない。
一年間通して、その日一日の自分の判断に100点満点あげられる日なんてそうはない。
必ず「あのときこう判断していれば、これを見ていれば、もっと取れた、損失を回避できた」という反省点があるはず。
その反省を繰り返すことでしか改善されない。
トレードという作業は、相場と向き合う以上に、自分自身と向き合うことが求められる。
どんなに高い分析力を持っていても、リスクを取った瞬間に冷静な判断力を失う人もいる。
日々変化するマーケットに混乱し、判断を誤ることもある。
落ち着いて、冷静に判断できる引け後に、一つひとつをしっかりと振り返るプロセスはとても大事なもの。
その積み重ねがその瞬間に「あのとき」を思い出させてくれて、過去とは違う判断を下せるようになる。
色んな手法やアプローチを試すことは悪いことじゃない。
でも自分のトレードが何を取りにいっているのかが分からなくならないようにすること。
ファンダメンタルズで判断してポジションを取った。
その企業の変化や成長を取りにいっているのに、テクニカルをベースに安易に下りてしまった。
その後、株価が上がってしまって、「自分が下りた水準より高い株価で買いたくない」と感じて、その変化や成長を取りきれなかった。
一つ一つのポジション・テイクには根拠があるはず。
エントリーとエグジットの根拠をしっかりとマッチさせること。
入った理由と出た理由が異なるのが一番まずい。
あれもこれもと欲張ると、結果として客観的にみると「あなたの運用は何を取りにいこうとしているのかが見えない」と言われる運用になってしまう。
企業の変化や成長も取りたい。
相場の波も取りたい。
それを本当に整理して、しっかりとそれぞれのポジションをコントロールしきれるのならそれでもいい。
でもそれってすごく難しいこと。
自分もオプションのストラテジーでマンスリーベースのリターンを取りにいくようなポジションを持ちながら、先物と個別株式のアウトライトやりながら、若干だけどロングショートもやっていたことがある。
そのときの自分のデスクがこんな感じw
今のように高解像度のモニターもなかったし、液晶ですら一部しかなかった時代だけど、周囲の人から「こんなにモニターあって全部見きれるの?」とよく聞かれたものだった。
プログラム書いて、システム的な判断も出来るようにしたり、当時のソリューションの中ではそれなりに色んな効率化に取り組んでもこの状態だった。
90年代はオプションから始まって派生商品中心で取り組んでいた。
でも98年辺りからは個別株式も積極的にやるようになった。
先物だけ(特に日経平均先物)のトレードだけにこだわっていたら、ITバブルは乗れなかった。
その後、ITバブルが崩壊して、株価が低迷し、空売り規制などが入るようになってから、再度先物中心にシフトした。アップティック・ルールとか、空売りに対する規制が強化されたことで、下がると思ったときに売れない個別株式よりも、先物中心に戻した方が短期トレードにおいては効率的だと判断したからだ。
様々な商品やアプローチに取り組んだこと。それが時代の変化に適応し、自分がそれなりに長い期間現役でいられた一つの理由ではあるかもしれない。
そうやって自分の運用の幅を広げるために取り組んでいたものではあるけれど、オプションのストラテジーと先物のアウトライトとかは結構相反するトレードをしなければならないことも多かったし、ロングショートで売っていた銘柄を日計りでは買いたいと思う時もある。
それをコントロールしきって、適切に一つ一つのトレードを完結させることって至難の業だ。
それをやりきるにはシステム的な補助なんかも必要になるかもしれない(メンタルに左右されない機械的な判断)。
結局、自分の場合、最終的には自らが最も得意とする手法に集中するようになっていったし、他のアプローチは他に得意とする人がやればいいと割り切るようになっていった。
今はすぐに数字が思うように伸びなかったとしても、
「こういう根拠、こういうアプローチで取りにいっていて、現在の相場がこうだから今はこうなっている。でも今後の相場見通しはこうだから、これを続ける。」
でもいいし、
「自分は将来これを目指したいから、これを続ける。」
でもいい。
まず一つ一つのアプローチを自分が納得できるまでしっかりと極めて欲しい。
一番いけないのは、一つのアプローチを自分なりに突き詰め切れていない中で、安易にアレもコレも取りにいって、結果として何を取りにいっているのか分からないような運用で終わってしまうこと。
同じアプローチでうまくいっている人もいるはずだ。
その人と自分の何が違うのか、自分がこう考えたときにその人はなぜそう考えることができたのか?
異なるアプローチに手を出す前に、それをもっと突き詰めてみて欲しい。
それをモノにしてからでも、異なるアプローチに挑戦するのは遅くはないと思う。
もちろん色んなアプローチを触ってみてから、自分の道を決めるというのはアリだと思うけれど。
ディーリングという場所に居られる大きなメリットの一つ。
他の運用者と身近に接し、そういった人たちと意見を交わし、学ぶことが出来る。
それを活用して欲しいと思う。