【ビジネス】消えゆくディーリング業界
Twitterでも流れてきたので…
また一社ディーリング部門閉鎖とのこと。
非常にディーリングが強かった会社だった。
S氏がいたK証券。
U氏や自分がいたA証券。
それ以外にも多くの証券会社でディーリング部門が閉鎖されてきた。
そしてまた一社、強いと言われていた組織が消えていく。
3年後にどれだけの会社でディーリング部門が残っているのだろうか。
もう二桁の人数のディーラーがいる会社は数えるほどしかない。
いよいよ「未経験者が運用の仕事にチャレンジ出来る場所」がなくなっていく。
なんとかしたいんだけど、出来ることには余りにも限りがあるなぁ。
稼げていない運用者
損益のブレが余りに大きい割にリターンが低すぎる運用者
他人のお金だからリスクを取れる
他人のお金だから損してもいい
過去に稼いだ範囲で負けているだけなんだから問題ない(その主張は成功報酬や全てのコストを控除してなお利益が残っていて初めて言える話)
そんな身勝手な主張をして不満を言う。
そんな主張が通るのは自分のお金でやればこそ。
他人のお金や投資家のお金を預かって運用する以上、それに見合うだけの責任感とプライドを持っていて欲しい。
世界的に見ても異常な成功報酬水準が、業界の構造を破壊してしまった。
全員が儲かるような分かりやすい相場でない限り、リターンを残せないディーリング部門。
経営からみれば、リスクとリターンが見合わないと判断されてもおかしくはない。
全てのコストを控除しても利益が残る。
これが他人のお金を預かって運用する仕事で最低限求められるもの。
これまでもらった報酬や、自分にかかっているコストを全て控除したときに、どれだけの利益が会社に残っているのか。
それがない状態で不満ばかりをぶつけているようではどうにもならない。
そういった人材を残し続ければ、組織が弱体化して、いずれその組織は消えていってしまう。
せめて、それだけ恵まれた環境でリスクを与えてもらっていることを自覚して、プロの運用者として胸を張れるようにあって欲しい。
マネジメントの立場に立てば、出来ることなら一人残らず守ってやりたいし、残してやりたい。
でも組織の負担にしかならない人材を守り続ければ、結果として組織を壊してしまい、結果を出して頑張っている人材まで巻き込んで終わることにもなりかねない。
長年、ディーラーとしてやってきて
ディーリング部長としてマネジメントの立場も経験してきて
色んな思いがある。
自分にとっては一人一人が大切な後輩だし、彼らには前向きに夢を持ってこの仕事に取組み、幸せになって欲しい。
でも、みんなの意識が変わっていかないと、いずれやれる場所は一つもなくなってしまうだろうから。
マネジメントの意識。
ディーラー達の意識。
その両方が変わってこそ未来は拓ける。
個人としてやれるだけの資産を残していればいいけれど、40歳、50歳になってから、突然ディーリング部門がなくなり、行く場所がなくなり(おそらくはどの証券会社でも拾ってくれるところはなくなる)、スキルも経験も限られていたら、その先とても辛いことになる。
今まだディーラーとして、その場所に立っていられることはおそらくとても幸運なことだ。
でもその場所から周囲を見渡したとき、その危うさを自覚できていないと、いつか辛い思いをすることになる。
ディーラー一人ひとりにも、組織を守るために何が必要なのか考えてみて欲しい。
それが自分の未来を守ることにもなるだろう。
厳しい言い方になるけど、ファンド・ビジネスの世界に出てみれば、ディーリングの世界がどれだけ甘い環境なのかは思い知ることも出来る。
ファンドでのリターンは全てのコスト(成功報酬を含む)を控除したうえでのネット・リターンで見られる。
地場のディーリングは収益額が重視されがちで、利回りを見ているところは少ない(自分がディーリング部長になって導入はしたけれど、その利回りも所詮はグロス・リターン)。
利益が残らないと判断されれば、そのヘッジファンドは問答無用で解約されるだけのこと。
雇用がどうの、もっとやらせてくれとゴネられること自体がかなり恵まれた話でもある。
「他人(投資家)に信頼を与えられてこその運用者」
プロとしての自覚と誇りを持って頑張って欲しいなと願う。
そしてその場所をこれからも守って育てて欲しいと願う。
自分もそのために全力で出来ることはしていこうと思う。