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【回想録】試練のとき…3

憧れのチーフへの小さな疑念が生まれた頃。

自分が作り込んでいたチャートソフトがほぼ完成に近づいていた。
自分の勉強を兼ねて作ったものだったが、これまでの自分の知識や経験、色んな端末を使っていく中で感じたものを活かして開発していた。

勉強しながらだったから、半年ちょっとの開発期間。
週末をつぶして少しずつ作り上げていった。

それもほぼゴールが見えてきた頃、他の人の意見が聞きたくて、何人かの親しい人に使ってもらっていた。
自分で作ったものだから修正も簡単。

あるとき情報会社の先輩から

「これ売る気ない?」

と声をかけられた。
勉強のため、自己満足で作っていたものだから、最初は冗談かと思った。

しかし、よくよく聞けば本気のよう。
ある程度まとまった金額で買いたいとのこと。

自分がしてきた努力がそういった形で評価されたのは嬉しかった。
当時は金が全然なく、月々の生活も余裕がない。
勉強するための本も赤いカードのキャッシングとかでお世話になってまで買っていた。
ちなみにその頃のお小遣いは1万~3万。

借金もあり(サラ金とかではないけど)、それが売れるとようやく借金もなくなり、生活に余裕も生まれる。
そんな状態だった。

しかし、契約とはいえ、会社勤めの自分が勝手にやる訳にはいかない。
最初に部長に相談してみた。
すると社長もOKとのこと。

「ディーリングも頑張ってくれているし、日々の業務は朝早くから遅くまで頑張ってる。週末や個人の時間を使ってそれだけのものを作ったのなら、自分のものとして買ってもらいなさい。」

とのこと。

ところが…

思わぬ形でストップがかけられた。
チーフにその話をして、了承をもらおうと思ったのだが、OKが出なかった。

「お前は俺のチームの一員なんだから、お前が作ったものはチームのものだ。」
「それをどうするかは俺が決める。」

と。

確かにチームの一員ではあるが、雇用主は所属していた証券会社。
その経営者がOKしている。
それを奪う権利はあなたにはないはずだ。

と自分は初めてチーフに対してNOを言った。
チームの成功報酬を決めたときはうまくいかないのを会社のせいにし、自分の責任を示さない。それなのに取り分はしっかり取っておいて、部下のものはまるで自分のもののように言う。

受け入れられなかった。
憧れの人、尊敬する先輩、そしてディーラーとしての師匠…。
でも譲れないものがあった。

「そこまで舐められたら俺も引けない。覚悟しておけよ。」

とチーフに言われ、試練の日々が始まった。

チーフの内部でチーフと自分の戦争状態が起き、重い空気が流れる日々。

「切られるかもしれない。」

そう覚悟した。
業界にほとんど知り合いのいない自分。
一方で業界に知り合いも多く、影響力のあったチーフ。

正直、怖かった。

そのとき部長が仲裁に入ってくれた。
自分は期中の利益(1億円以上はあったかな)を全部チームに残すから、一人でやっていきたい…と願った。
そしてそれは叶えられた。

チームから出て、いちディーラーとして、その会社で再スタートを切らせてもらうことになったのだ。


苦しい時期だった。
とても悩み、苦しみ、色んな人にも相談した。

「自分は間違っていないだろうか?」

何度も自分に問いかけた。
世話になってきた人達に反抗した自分。
今の自分があるのはこの人達のおかげ。

これでいいのだろうか?
社会人になって初めて一人で浴びるほど酒を飲んだ夜もあった。

でも譲ってはいけないものがある。

「俺はあの人のものではない。」

自分は最後まで貫いた。

今思えば、チーフと兄貴は独立を考えていた。
証券情報会社の設立。
それを進めていく上で欲しいコンテンツであったのだろう。
そして彼らも勝負に出ようとしていたから、余裕がなかったのかもしれない。

でも自分はこう言って欲しかった。

「お前と一緒にその会社を成功させたい。だから力を貸してくれないか?」

ただそれだけでよかったのに…。

その後、彼らと道が別れていくことになる。

「アイツは仲間より金を取った。」

と言われたこともあった。

自分の社会人人生の中で最もつらい出来事の一つだった。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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