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【ビジネス】ディーラーとプログラマー


API公開している証券会社とかってどれぐらいあるんだろうか?
FXに比べてかなり遅れている印象はあったけれど。

こういう取り組みは必要だし、重要だと思うのだけれど、アルゴ化された取引の中に作為的相場形成や相場操縦につながりかねないロジックがあったときに発見・防止する機能がないと、なかなか証券会社としてはリスクをとりづらい。

記事を読んだ限りはHFT的なアプローチのアルゴはなさそうだけれど。
その発注プロセスやロジックがブラックボックス化していると無法地帯にもなりかねない。一方でそれらは開発者にとってはノウハウでもあったりするから難しい。

ディーリング業界で一般的に使われているインタートレード端末では、最新の世代では言語化したもの(限られた言語)を使うことが出来るはず(検討はしたけれど導入はせず。いくつかの理由から、APIを公開しておらず、言語化したものを直接は使えない世代のものをそのまま利用することにした)。

海外製のEMS・OMSでは、APIを公開していたりするものも多い。
TT(Trading Technologies社)なんかは派生商品限定でしか使えないけれど、昔から「Auto Spreader」という機能があったり、Excelから発注できたりもしていた。

HFTに対する規制によって、それに伴い届け出が必要になった。
これは取引仲介を行う証券会社にも求められている。
アルゴ化されたときに、そのロジックによってはHFTに関する規制に従って、しっかりと届出をしていないといけない。「高速取引行為者」という基準は、どのレベルからそれに該当するのか、外形的基準はどこにあるのか、結構社内でも議論になった。

その辺どう対応しているのだろうか。もしくはどう対応していくのだろうか?

FXなんかと違って、株式の場合は「板」の存在と、流動性の少ない銘柄などでは比較的少ない金額でも影響が出やすいこともある。作為的相場形成や相場操縦とされる行為が生じやすい土壌がある。

APIを公開しているEMS・OMSを用意してやって、開発スキルを持つディーラーに自由にやらせたときに何が起きるか?

わずか数十名のディーラーですら、それぞれの意識やモラルには差異がある。
スタッフの増員も含めて、監視体制の強化もやってきたけれど、手動ですら全取引を目視で追い、監視するのは至難の業だ。管理・監視にもシステム的な対応をしていかないと追いつかない時代になりつつある。ただでさえ厳しい事業環境にあるディーリング部門で、そこに大きな投資を行うことはかなり厳しい。結果として、それが撤退のトリガーにすらなりかねないだろう。だから監視しきれないアルゴ化された高頻度の取引を内部的にやらせられる環境作りというのは容易なことではなかったりする。

やれるとしたら
・「高速取引行為」にならない一定の基準を作り、その基準の範囲内で言語化した取引の実行を認める。
・そこに作為的相場形成や相場操縦につながるロジックが内包されていないかどうか、事前にソースのチェックを行う(これが出来る人材が管理にいるところはまずないだろうし、ソース(ノウハウ)の開示は当事者が嫌がる可能性も高い)。
その辺をクリアしないと証券自己として実際の市場でやらせていくにはリスクが高過ぎたりもする。

取引所側の発見能力は明らかに向上しているし、悪質なものを摘発することはできるかもしれないけれど、今後個人に幅広く広がっていったとき、金商法への理解度の低い層やモラルが低い一部の参加者によって引き起こされる問題は大きくなる可能性がある。

高い開発スキルを持つ人材が運用の世界に来ることはとてもいいこと。
でもそれに伴う管理体制構築が追い付かず、フロントのみが、その能力を自由に発揮させていったとき、ごく一部のモラルの低い存在によって引き起こされるリスク。それは組織を壊しかねないものだ。
自分は、そういった人材が市場にどんどん増えていく必要性をずっと感じていながらも、そういった問題との間での十分な解決策を持てなかった。

裁定業者的な運用をしているディーラーもいる。
再現性があり、論理性があり、高い確率でリターンを残せる。
でも手動である限りカバーできる限界はあるし、「裁定」である以上、リスクを抑制してやっているんだから、リターンも低くはなる。そういったアプローチ(高い勝率とリスクを抑制した安定的なリターン)を最大化するなら、資金力とその知識や経験を活かせるシステム的なサポートがポイントにもなってくる。

マーケットや値動きをよく知り、経験を持つディーラー。
高い開発スキルを持ったプログラマー。
これが一体となったとき(個人でそれを両立できる人も数少ないがいる)、HFTによって追い込まれていった「日計り」という手法が、また違う意味合いを持って存在価値を持ってくる。テクノロジーの進歩に適合していったHFTという存在は、ただ否定されるべきものでもなく、我々がただ自分たちの持つものを活かしきれずに遅れているだけなのだから。

日本発のHFTの少なさはちょっと異常だ(ゼロではない)。以前、取引所の方にご紹介いただいてHFT業者の方々と飲み会を開いてもらったときは全て「外国人」だった。
「なんで日本人は自分たちの国の市場でHFTをやろうとしないんだ?」
と彼らに質問されたことがある。

確かに…
高いプログラミングスキルを持った人材もいる。
インフラもある。
資金もある程度はある。
取引参加者である証券会社ならコストも安い(東証の執行コストはかなり安い)。

それなのにその問いに対して「やれない理由」を答えている情けない自分がいた。

外資系や大手ブローカーの中では、ブローカーアルゴの開発や、SOR、ダークプールを活用するための開発をやっている人たちもいる。スキルも知識も経験もある。そもそもHFTやマーケットメーカーと言われる存在はそういうところから生まれている場合が多いはず。

将来の日本発のHFTを増やしていく意味でもこういったスキルを持った人材の育成や、市場参加の道を増やしていくことは大事なこと。
せっかくの素晴らしい取り組みが、ごく一部のモラルの低い参加者によってぶち壊しにされないためにも、大きく踏み外すことがないように適切に管理し、育てて欲しいものだ。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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