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【トレード】運用者は魔法使いじゃない

ここ数年、アクティブ投資信託、独立系投資信託が評価され、大きく実績を伸ばし、一般化されたのはとてもいいことだと思う。
様々な方の取り組みのおかげで投資(お金のこと)についての興味や理解も広がっていると思うし。

でも前からちょっと気になっていたことがある。
相場が大きく下げるときに損が出たからといって、思いっきり悪口言ったり書いたりする人。

「いやいや…ロングオンリーのファンド買ってるんだから、相場がこれだけ下がればしゃあないよねぇ。」

そんなことは、ある程度相場分かってる人なら当たり前のことなんだけど。
いくら銘柄選別能力の高いファンドマネージャー、投資信託であっても、ロングオンリーで「方向性のリスク」「βリスク」をガッツリ取っている以上、相場が下落すればある程度損が出ることがあるのはしゃあないこと。
以前聞いたところでは、一部の機関投資家で流行っていたらしいのが、そういった銘柄選別能力の高いアクティブ投信を買って、先物やETFなど指数関連商品を売って「βリスクを消して、αを取りにいく戦略」。
優秀な投資信託を買い、指数関連商品を売ることで方向性のリスクを消し、その投信の銘柄選別力のみを抽出する形で安定的なリターンを上げようとするやり方。

どんないいファンド、ファンドマネージャーでも、その運用指針(目論見書やPPM)に則って運用を行う以上、万能ではない。
魔法使いじゃないんだから。
ロングオンリーであれば、基本的にはベンチマークとなる指数(TOPIXなどが一般的)を上回っていれば優秀といっていいだろうし、TOPIXが大幅に下落したときにそれよりも損失が抑制されていれば十分優秀といえる。

もちろん投資した以上、損はしたくない、損をしたら誰かを責めたくなるという気持ちは分からないでもないけれど、投資はあくまでも自己責任。

自分が何に投資をしているのか?

投資している商品の特性、リスクやリターンをしっかりと理解し、把握しておくこと。
そのうえで「こういった運用をするファンドなのに、これじゃダメだろ」というのならまだ分かる。

一般の個人投資家さんならまだ分かるんだけど、これが証券会社の自己運用(ディーリング)の現場でもこういった運用への理解不足は結構起きてる。それも自分がまだ入社したての20数年前からずっと…。

日経平均株価が大幅に上昇したときに、ディーリング部があんまり儲かっていないと責める。
「なんで日経平均株価がこんなに上がっているのに儲かっていないんだ?」

まぁどんな相場でも、その流れを読んで稼ぐのが仕事である以上、それも宿命と思って受け入れてはきたけれど、これ結構辛いんだよね(^^;

上げでも指数以上に儲けて、下げても儲けて、動かなくても儲ける。
さすがに魔法使いじゃないんだからさ(^^;

月間損失限度額があるのが一般的な世界。
リスクをコントロールしながら、いかに利益を積み上げていくか。
下げでもリターンを取りにいくし、動かなくても最低限のリターンを求められる。
上げたときも、もちろんリターンを取りにはいくけれど、限定されたリスク許容度の中で、そんなに都合よくはいきませんから。

それこそアービトラージ的な運用やってるのに、指数が大幅高したときに「指数に負けてる」と言われたらたまったもんじゃない。

ディーリング部のマネジメントがディーラーに求めているもの。
それは会社によっても違ったりする。
マネジメントとして、ディーラー達に求めているリスク・リターンのプロファイルが何なのか?
その実現のために社内のルール(損失限度管理や運用ルール)が最適化されているのか?
そのうえで指数の動向に左右されないリターンを求めているのならば(どこのディーリング部もそれは同じだと思う)、「指数がどうこうだから」という言い方はちょっと違う。

ヘッジファンドでも「βニュートラル」を示しているロングショート・ファンドは少なくない。
ショート・ポジションを持ち、指数の方向性によるリスクをなくし、銘柄選別力でのアルファでリターンを得るやり方。
同じ「ファンド」であっても、ロングオンリーがほとんどの日本の投資信託との大きな違いだろう。

大事なことは、自分がどういったリスク・リターンを求めているのか?
それにマッチした投資対象を見つけ出し、その投資対象の運用特性を理解したうえで、投資を行うことなんだと思う。



プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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