【マーケット】市場の健全性
新潟・山形での地震。
まずは被害に合われた方にお見舞い申し上げます。
ホント相場って難しいですね…(^^;
日本市場の昨日の地合いから感じられるのはリスクオフの流れ。
FOMCとかを控えて売買代金も低迷し、完全な手控えムード。
そこにきての下落となり、雰囲気はあんまりよくなかった。
夜間に入るとドラギ総裁の追加金融緩和に前向きなコメントが伝わり、欧州では一部では「金利がなくなる」動きとなった。株式市場(夜間の先物取引)も海外株高につれて戻り歩調。その後に日本では地震が発生し、少し売られかけた直後にトランプ砲炸裂。S&Pは年初来高値が見えてきちゃってます。
なんというかたった一人の人物の発言(Tweet)にここまで世界の政治・経済・市場が振り回される状況って今まで見たことなかった気がします。
株価が調整を強いられるきっかけになった米中貿易摩擦(特にHUAWEIへの規制・排除の動き)。まだ解決したわけではなく、G20で話し合うことになっただけだと思うんですが…ねぇ(^^;
経済指標の悪化→金融緩和→株高の流れなのかもしれないですが、ここまで金利がない状況でどこまで金融政策の手段とその効果が期待できるものなのか?
圧倒的な影響力を背景とした恫喝→ギリギリまで追い込んでからの手の平返し→妙に相手を持ち上げて和解ムードを盛り上げる
北朝鮮のときにも見た流れなのかな。
まぁ経済のこと考えると貿易戦争が収まり、中国市場がより開かれて、相互に経済発展し、株価が上昇していくのなら悪い話ではないけれど、なんとなくスッキリしないような、危うさも感じるような…。
議論の背景やプロセスも見えない中で、一人の男の発言がこれほどまでに市場を左右する。
ちょっと違った意味で、怖い相場だなと感じます。
で、下のチャートはBloombergで出したものです。
S&PとTOPIXのレシオチャート。
2018年から日本株のアンダーパフォームが続いていて、今年は特にそれが顕著なんですよね。
今年最も上昇が鈍いのが日本株って印象なんです(下、Bloombergより)。
米国も欧州も金融緩和政策はやっていたとしても、中央銀行が株(ETF)を買うという行為には踏み込んでいないにも関わらず…。
消費税引き上げを控えていること、金融緩和政策も欧米と違って相当なレベルでやり続けた結果、追加緩和余地が相対的に少ないとみられがちなこと、国際競争力自体の低下…理由をつけようと思えば、いくつか理由はあるのでしょうが。
先日、市場関係者の方と意見交換をする機会があり、そこで話したことをちょっと触れてみようかと。
下のグラフは2010年からのETF市場の規模と日銀の買い入れ額の累計値とそのシェアです。
日銀の買い入れ額の累計値は、あくまで買い付けたときの金額を累計したものに過ぎないので買い入れ始めた時期の水準からみると時価評価ではさらに大きくなるはずです。
ETF市場が拡大した部分はほぼ日銀の買い入れによるものと言ってしまっても過言ではなく、市場シェアも実質7割を超えてしまっています。
金融政策において、市場に一定の介入をすることは理解できる面もあるんですが、債券には償還があるけど、ETFには償還はない。
為替市場ほどの市場規模は株式市場にはない。しかも、ここまで継続的に市場への介入を続けてきた例は過去にない(少なくとも自分が知る限り)。
個人的な意見ですが、中央銀行が過度に市場に介入することで、市場の合理性や活力が奪われ、結果として市場を育成するどころか、市場の破壊者にもなりかねないと感じています。
市場は儲けたい、損をしたくないと感じている(リスクとリターンに向き合っている)投資主体があるから、変動も生じる。
それが短期的な動きを取りにいくような投資主体にとっては収益機会にもなり、そういった投資主体もいるからこそ厚みも出てきて(売買代金も増加し)活力が生み出されていく。
リスクもリターンも無視した巨大な投資主体によって歪められた市場には、どこまで価格形成の合理性が保たれているのか?
合理的・論理的な思考をする人が「おかしいだろ」と思う場面が増えているような気もします。
それだけ介入することで市場が大きく上昇し、(狙い通り?)資産インフレ起こして景気がよくなっているならまだ効果があったと言えるのかもしれないけれど、実際には日銀がこれだけETF買い入れを続けていたって日本株はしっかりアンダーパフォームしちゃってるわけですし、その効果と意味がどこにあるのかなとちょっと疑問にも感じてしまいます。
そして目には見えにくい、市場への悪影響はじわりじわりと広がっている気がします。
結果として、市場の活力を奪っているだけなのではないか?
償還がないETF市場で際限なく買い続けると、いつか市場を壊すのではないか…そんな不安を感じます。
市場で生きてきた自分としては、もっと市場を信頼してもらいたいと思うのです。
確かに時として暴力的であり、無茶苦茶な動きをするのも市場だけれど、リスクとリターンに向き合った人たちが参加者の主体である限り、それでも市場の価格形成力は保たれると信じています。
市場への介入は、市場の健全性を損なわない程度に、節度をもってやってもらいたい。
ま、ちっぽけな市場参加者は、そう思いながらも、それに合わせて対応しなきゃならんのですけどね(^^;