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【トレード】運用手法向き不向き

ようやく少し時間が作れるようになってきた。
ということで、ちょっと書きたいなと思っていたことをまとめて一気に書いてみた。
まとめて書いたので長いです。次はいつ書けるか分からないのでw

運用手法(ストラテジー)は様々。

どれが正解で、どれが間違っているかなんて話する自体に興味はない。
勝てば正解で、負ければ不正解(でも手法そのものが間違えているのではなく、その手法に適した判断が出来ていないことに問題がある)。

リスク・マネジメントの観点から、明らかに論理性に欠けていて、間違ったアプローチをする人がいる。
それは運用手法云々以前の問題。

短期でやるのか、中長期でやるのか。
モメンタムでやるのか、ファンダメンタルズでやるのか。
順張りなのか、逆張りなのか。
バリューなのか、グロースなのか。

それは「選択」でしかない。
どのアプローチを主体でいったとしても、銘柄の選別や、投資タイミング、市場全体の状況分析、リスクのマネジメント…様々な要素が絡み合って運用成果は実現される。
自分の個性(思考プロセス)に合ったやり方を見つけていけばいいのだと思う。

でも運用するお金には色がある。
個人のお金なのか、会社のお金なのか、投資家のお金なのか。
失っても割り切れるお金なのか、損は絶対に避けなければいけないお金なのか。
すぐに必要になるお金なのか、10年20年はすぐには必要のないお金なのか。

それによっても運用の適合性は変わってくる。

「損失(リスク)許容度」

まずここをしっかりと整理し、把握しておくこと。
沢山の運用者を見てきて感じること。

消えていった多くの運用者を見ていると、リスクとリターンのバランスが取れない人が圧倒的に多い。
リターンばっかりに目がいき、リスクに目を瞑るか、それを軽視してしまう人。
小さな金額で大きく稼ごうとする。
悪いことではないけれど、それだけハイリスク・ハイリターンであることは理解しておくべきだ。
短期間に何倍にもなるようなリターンを得た裏には、短期間にほとんどを失うようなリスクがある。

ギャンブル性の高い運用であっても、自分自身のお金であり、失ってもいいと割り切れるお金ならばそれでもいいだろう。
でも他人のお金でそれはやってはいけない。

相場の世界で長く勝ち残るためには、ギャンブルではなく、勝つべくして勝つことが大切だ。
負けることが当たり前のようにある世界。
リスクが沢山潜んでいる世界。
そこで生き残る。

一発勝負や、ギャンブルのようなリスクの取り方では長続きはしない。
重要なのは「確率の勝負」に持ち込むこと。
短期トレードなら、回数や頻度で勝負する。
徹底的なパターン分析を元に、何度もそれを繰り返すことで、勝ったり負けたりしながらも、最終的には勝ちを積み上げていく。
中長期のトレードならば、リスク(銘柄)分散をしっかりと行う。投資判断の思考プロセスが概ね正しければ、負けるトレードが一定数あっても、最終的には勝ちが積みあがる。

「売買タイミング」を見つけ出すまでの思考プロセスや、「銘柄選別」するまでの思考プロセスが大事なのであって、その一瞬のタイミングや、たった一つの銘柄にほれ込む必要はないということだ。
どんなにその思考プロセスが論理的であり、正しいものであったとしても、相場は思うようにはいかないものだ。間違えてしまうこともあるし、様々なファクターが織り重なる中で読み切れない動きもある。それでもしっかりと確率の勝負に持ち込めていれば、勝てる人は勝つべくして勝つ。

でもこういった分散をしていれば、短期間で何倍にもなるようなギャンブル的な利益を上げるのは難しいだろう。
そういったギャンブルはあんまりしてほしくはないけれど、それでも宝くじよりは確率が高いかなw
ただそれをやるのならば自分のお金で自己責任で。

そしてストラテジーには向き不向きがある。
その向き不向きは個々の個性に対する向き不向きと、目指す運用による向き不向きがある。

短期運用はオーバーナイトリスクを最小化できるし、トレーディング・スパンが短いから変動要因となるものも最小化できる。見るべきものも減らせるし、思考プロセスも単純化しやすい。
瞬間的な判断力・決断力や、メンタル面の強さがより求められる。

中長期運用は見るべきものが一気に増えてくる。ミクロ・マクロのファンダメンタルズ、政治・経済など様々なものを分析しながら、判断を下していかなければならない。
分析力・思考力、根気の良さや地道さなどがより求められる。

そういった個性に対する向き不向き。

それとは別に「運用者として何を目指すか」によっても向き不向きがあることは知っておいて欲しい。
特にまだ若く、これから運用者としての未来を目指す人は、自分が何を目指すのか?そこで求められる運用スキルがどういったものなのか?を知っておくことは大事なことだ。
いざある程度までやっていってから、このやり方では目指すものには向かないと途中で気が付くのはちょっともったいないから。

沢山の運用者を見てきた中で、可能性が沢山ある人材でも、そこに不適合があるとうまくいかない場合もあった。そこは与えられた環境に合わせてこそのプロのはずなんだけれど、そのミスマッチがストレスになったり、思うようにいかない原因になるのは、やっぱりもったいないことだから。

個人投資家ならば、自由度は高い。
自分のお金だけだし(人のお金を運用するのはライセンスや登録が必要。ライセンスもないのにそういったことをしている人は金商法違反)、どういった運用をするにしても好きに出来る。
ギャンブルしたければしたっていい。
でも相場が好きで、多くの人を惹きつけるような素晴らしい個人投資家になりたいのであれば、やっぱり根本はしっかりしていて欲しいけれど。
何人かの尊敬するべき素晴らしい個人投資家にも出会ってきた。
彼らは十分プロの投資家としてやっていけるだけの運用者だろう。
ただ一般的に、個人でやるならば資金は通常限られる。そして専業でやるならば、生活費も含めて稼がなければならない。保証はないし、余裕を作ろうと思えば、一定の利益(金額)以上を稼ぐ必要がある。
限られた資金で、一定以上の利益を出す。
つまりある程度はハイリスク・ハイリターンを目指す傾向になる。そういった意味ではボラティリティのある程度高い中小型株中心になるか、派生商品や信用取引を使ったレバレッジを活用して、ある程度のボラティリティを許容しながら、より高いリターンを目指すことになる。
ロスカットのルールとかは、信用や派生商品使っていない限りは外部に縛られるものはない。だからロスカットは疎かになりがち。相場で失敗して全財産を失ったり、借金背負うなんて事態に陥る人も出てきてしまう。
個人投資家として成功し、長く生き残りたいのであれば、誰かがストップかけてくれない環境だからこそ、ロスカットやリスクに対してどう向き合うかをしっかりと学んでほしい。少ない資金で大きく稼ぐことばかりを煽るような人よりも、耳の痛い「リスク」の話をしてくれる人の言葉に耳を傾けて欲しい。後者の人は、きっと相場の怖さと向き合ってきた本物の人だと思うから。

証券ディーラーならば、会社にもよるけれど資金はより大きくなる。
ただ会社によって様々な制約を受けることになる。
運用を知らない人によって作られたルールが沢山ある会社もある。
リターンを生み出すために、適切なリスクを付与することすら出来ない会社も少なくない。
自分はディーリング部長だったときに、その制約を取り除き、出来る限り本人が望む手法を選べる環境作りを目指してきた。
証券ディーラーは「日計り」が代名詞のように思われてきたけれど、それは違う。確かに手法を会社によって縛られるところもある。が、本来はそうではなかった。
それがどんどんそうなっていってしまった理由はあるけれど、前にも触れているのでここでは触れない。
ロスカットについては、一般的なのは「月間損失限度額」だ。会社によっては「日中」まである。そんなのあったら日計りしか出来なくなるのは当たり前だけど。
もしロングオンリーをしたいのであれば、月間だけで損失限度が決められてしまう地場ディーリングだと苦しくなる。大きくリターンが出た翌月に、その銘柄群が調整しただけで損失限度額に達してポジションクローズを迫られるなんてことにもなりかねない。
長期投資の視点でロングオンリーをやりたいのであれば、個人でやるのか、アナリストなどを目指してそちらからロングオンリーのファンドマネージャーになるかの方がいいだろう。

優位性という面で代表的なのは「手数料」だろう。やはり自社が取引参加者であるだけにその優位性は大きい。場口銭は実質0.3bpsもいかないぐらいだろう。会社によってはそれに乗せてある程度取るところもあるようだけれど、それでも安い。短期取引で頻繁に取引を繰り返す手法ならば、これは非常にありがたい話だ。
一方で、そういった環境に依存している取引になりがちな面もある。「その手数料じゃないと利益が残らない」やり方では、将来違う道に進みたくても進むのは難しくなる。もう一つ頭に入れておくべきなのは、「東証の場口銭は世界的にみてもかなり安い」ということだ。将来、取引所が世界の基準に合わせるといって、場口銭を引き上げるリスクだってゼロではないのだから。

短期運用はサイズ(キャパシティ)の限界もある。流動性の高い先物や大型株ですら、一人で数百億の運用で効率的なリターンを上げるのはまず難しいだろう。自分は数十億ぐらいまでしか回すことは出来なかった。もし短期運用でキャパシティの拡大を目指すのなら、HFT的なシステム・インフラを活用して、再現性のあるロジックで幅広く運用しなければ難しいだろう。それはそれで高い技術力が求められるし、資本力も必要になる。個人で簡単に実現できるものではない。日本初のHFTがもっとあってもいいとは思うけれど(ゼロではない)。

もちろんディーリングという道を極めたいというのならば、それも一つの選択だ(個人的にはそれはすごく嬉しくもある)。ただ自分の運用にかかるコストや、収益率、ボラティリティ、シャープレシオぐらいは自分でも理解しておいた方がいい。あと世界的にみても「異常」と言われる報酬率の高さも自覚はしておいた方がいい。様々な環境の特殊性を当たり前と勘違いしていると、いつか居場所がなくなるかもしれないから。

証券ディーラーになりたいのであれば、その会社の環境やルール、リスク許容度、やりたい運用手法が許容されうるのかどうかなどを知ったうえで入らないと後で後悔する。
以前、何人かの後輩や元部下から転職の相談を受けたとき、「お前はディーリング業界には今は来ない方がいい。」「今のウチの会社ではお前の可能性は活かせない。他社にいった方がいい。」と話したことがある。
その器(会社)によって人材の可能性や未来が閉ざされることもありえるのがこの世界だ。
他社であれ、異なる業界であれ、自分はその個人の可能性がより活きる道があるなら、それを勧めてきた。
個人の可能性が活かされないことほどもったいないことはないから。かといって「会社のせいで儲かりませんでした」という言い訳も通用しない。
結果は全て自分が背負わなければいけない。

ヘッジファンドは?
それこそ手法は様々だ。
相対的に多いのはエクイティ・ロング・ショート。
特にグローバル・マクロが育ちにくい日本という国の特殊性などもあり、日本人ヘッジファンドの多くはそれになる。
執行コストは大きく上がる。説明責任も求められる。
運用成績は基本的に公開され(非公開も出来なくはないけど、投資家には開示しなければならないので、結局秘匿はできない)、公衆に見られながらの運用になる。
ユーリカヘッジや、Bloombergなど、様々なヘッジファンドデータベースが存在している。
投資家からは様々な形で開示を求められるし、信頼されたければ、しっかりとした第三者による管理を受ける必要もある。
アドミニストレーターやトラスティ(信託)、法律事務所、PB(プライム・ブローカー)や執行ブローカーなど様々なカウンターパーティが必要になり、そこにはかなりのコストもかかる。
でも運用や会計の管理を第三者が行うことが、不正防止にもなるし、投資家の安心にもつながる。
これまでそれなりの数のプレゼンテーションもしてきたけれど、投資家からは様々な質問も受ける。
それに対して論理的に説明できなければ、投資はしてもらえない。
実際に投資するにあたってのデューデリジェンスも実に様々。沢山のDDQ(Due Diligence Questionnaires)に回答しなければならないし、それがしっかり出来ないと投資してもらえない。
投資家も真剣なのだから、それは当たり前のことだ。
でも最大の魅力は、そういった大変さを乗り越えたうえで、魅力的なリターンを創出し、信頼を勝ち取れたときのAUM拡大の可能性だろう。
そういった面では、運用規模(キャパシティ)の拡大を追えないようなストラテジー(手動での短期取引など)はこちらの運用にはあまり向かない。
地場ディーリングに比べれば、報酬率も低いし、負担もかなり大きくなる。キャパシティの拡大を追える運用手法や人材でなければ、その魅力を活かしきることはできない。


長々書いたけれど、自分が十年後にどういった形で運用をしていたいのか?を一度考えてみて欲しい。
個人でも、証券ディーラーでも、ヘッジファンドや投資信託のマネージャーでも、素晴らしい人は沢山いる。
どれを目指すのが正解ということもない。
運用手法と同じで、あくまでも「選択」でしかないのだから。
でも目指すものと、実際に取り組んでいるものが、知識や経験の少なさから、その選択のミスマッチを起こしてしまう不幸はあまり見たくない。
自らの未来を考えたときに、どういった取り組みを今するべきなのか。
そんなことを考えるきっかけにでもなってくれたらと思う。



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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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