FC2ブログ

【トレード】運用に求められるものって?②

ちょっと話は逸れるけど…

IOP(Initial Offering Period…運用開始前の初期投資家向けの募集期間)が明日から始まります。
GWが10連休となかなかブッこんでくれたもんで、今回は中途半端なスタートにならざるをえなく…。
5月10日まではIOP。
その翌週から運用開始。
GW前に送金いただいてしまうと、円金利はマイナスなので投資家にご迷惑かけることになる。なので送金手続きもGW明けからという形になり…。歪んだ金融市場と、GW10連休の影響をモロに受けてしまったスタートのスケジュールです。

さて昨日の話の続き。
投資家と対話してきた経験をお持ちの方は、色々と共感いただいたり、こんなこともあったというお話もいただいたり…(^^;

運用って、本当に様々なアプローチがある。
対象とする商品だって色々。
金商法上でカテゴライズされているものだけでも4つ(為替、金利、株式、商品)。
加えて最近では仮想通貨(暗号資産)なんかもある。
実際にそっちのヘッジファンドもすでに出てきているものもあるようだ。

自分たちが主戦場としているのは「株式」。

株の運用ってどんな風にやるの?

うーん、安く買って高く売る(高く売って安く買う)。
これで利益を出すのが基本(すっごい当たり前のことだけどw)。

そんなシンプルなことなのに、実はものすごく色んなアプローチがあって、人によっても千差万別だったりする。

まずは投資(運用)期間。
日計りもあれば、長期投資もある。
ロング(買い)オンリーもあれば、ロングショートなどもある。

HFTのように目で認識できないレベルでのサヤ抜きに特化した運用主体。
ひと昔前の裁定業者(アービトラージャー)も同じような側面を持っていた。
彼らは「ファンダメンタルズ」なんて気にもしないだろう。
極論、日経平均がいくらだろうが、Fリテの寄与度がどうであろうが、そんなことはお構いなし。
彼らが着目するのは環境の優位性や流動性、価格変動の再現性などになってくる。
過度なボラティリティを嫌い、どちらかといえば平時の状況で再現性がある動きの方が望ましいんじゃないかな。
超短期売買だけに、発注件数も膨大なら、取り消し比率も高くなる。
ゆえに環境依存度は高いし、薄利多売がゆえに執行コストも収益に直結する。

日計りディーラーなんかになると、同じ短期でもちょっと違いが出てくる。
ファンダメンタルズはそこまでは気にしないかもしれない。
でも決算発表や、業績修正など、株価の変動材料となるものはしっかりと頭に叩き込み、その瞬間の値動きを狙ったりもする。そういう意味ではHFTよりは若干ファンダも気にしてるのかなw
でも大事なことはボラティリティ(値動き)。
値動きを取りにいく以上、その値動きがそれなりにないと収益機会も少なくなってしまう。
取り消し比率はどうしても中長期よりは多くなる(とはいえHFTほどではないけど)。

売買期間が短いと、どうしても取り消しの頻度が上がる。
ごく短い時間に小さな値動きを取りにいっている以上、空振りしたり、タイミングが合わないと思えば、いったんキャンセルしておきたいと思うのは至極当然のことだから。

ただ過度なキャンセルは、市場の価格形成にも影響を及ぼすことから、どんどん厳しい目で見られるようになってきている。
高速化し、呼値適正化で値動きが細かくなり、目視では後追いになりがちで、空振りなんかもしやすくなっている昨今。それに対して規制は厳しくなっていく。短期組が苦しくなるのもある意味自然な流れなのかもしれない。

これら短期組にとって「リサーチ」は基本的に興味はあまりないだろう。
日計りディーラーにとっては、リサーチ・レポートでレーティングが大きく変更されて、その銘柄が注目されて「値動きが大きくなる」と思えば、収益機会がある銘柄としてフォーカスはするだろう。でも彼らは投資ではなく、投機での目線になるのだから、ファンダメンタルズを土台にやっている運用とは全くアプローチが異なる。

ちなみに自分は投資も投機もどちらもあっていいものだと思ってる。
投機による流動性供給があるから、投資の人も執行がスムーズにできる。
マーケットは懐深く、幅広い。
そこには多様性が大事だとずっと思ってきた。
市場参加者の多様性こそが、その市場をより魅力的にし、活力のある世界にしていく。
投機=ギャンブル=悪みたいなイメージで見る人もいるだろうけど、自分はそうは思っていない。
投機だってリスクを取って市場に参加している。
取りにいっているモノが違うだけの話だ。

安く買って高く売る(高く売って安く買う)。
これをごく短い期間でやる。
そのためには見るべきものも、変わってくるし、その特性も投資とは違ってくる。

短期であれば、基本的に銘柄集中度は上がる。人間が一度に監視できる銘柄数なんてたかが知れてる。HFTのようにシステムを駆使しているなら話は別だけれど。
発注プロセスも、システムによる自動化がされているならともかく、手動で発注している時点で、何十銘柄も同時に短期売買やっていたら、執行プロセスだけで収益機会を逃したり、思わぬ損失につながってしまうかもしれない。
短期売買で重視されるものは「タイミング」だ。
そのタイミングを効率的にとるためには、出来るだけ集中し、一つ一つの売買を丁寧に、しっかりと取っていく必要がある。
そこでの分散は「回数」によって実現される。
同じような勝率の高い短期でのアプローチを何度も繰り返す。
回数の分散によって、確率の勝負にもっていって、最終的に利益を安定的に積み上げていく。

ただこういった運用は、執行コストが安いことや、トレーディングシステムの速さや安定性など環境依存度が比較的高いこと、規模の拡大が追いづらいことがある。よほどの流動性がある市場ならともかく。
一方で、安定した勝率を維持できるなら、資本効率は高いし、オーバーナイトリスクも限定されるために、実はお金の出し手にとっては「本当に安定的に勝てるなら」こんなにありがたい運用はなかったりもする。

実際にそういった運用をやってみると、難しいのは特にメンタル面のコントロール。
短期は特にメンタル面やセンス、感覚的なものが結構大事なものになり、向き不向きもはっきりと出てしまう。
一方で、見るべきファクターは期間が短い分限定的なので、AIやシステムトレードに持っていかれる部分は増えていきやすいところもある。それらは「メンタル」を意識せずに、ただ再現性の高い取引を淡々と執行し続けることが可能だから。

またこれらはファンドでやるのは結構難しいかもしれない。
ファンドビジネスは様々なコストがかかる。
執行ブローカーなどの対応、執行コスト…。
薄利多売になりがちな短期運用で、それらをカバーして十分なリターンを残すには、相当な運用規模が必要だろう。そしてそれは先に述べた規模の拡大が追いづらいことと矛盾する。
結果として、システムを駆使したHFTなどのようなアプローチでなければ、なかなか短期でファンドの規模拡大を追うという道筋は描きづらいものになる。ファンドでやる以上、ビジネスを発展させたければ、一定の規模拡大は追わなければならない。かといって規模が大きくなればリターンやシャープレシオを維持することは難しくなる(流動性リスクなど)。そういった面からは、手動で短期売買中心にやっている人がファンドを目指すのはあまり向いてはいないだろう。
どちらかといえば、運用資産規模は限定的だが、個人投資家や報酬率が非常に高い地場ディーラーに向いているアプローチになるのかもしれない。








コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR