昨日、リスクの重要性、そこが全ての起点になるということを書かせていただきました。
「リスク許容度」
「損失限度額」
これをどう受け止めるか。
実際に若い運用者を見ていて感じるのは
「ここまではやられていい」
という水準だと勘違いしてんじゃないか?
ということです。
そこで終わりと定められている水準だとしたら、そこまでやられたら試合終了なんですけどね。
結局、損が出始めると「損を取り返さないと始まらない」とそればっかりが頭にあって、リスクを振り回していき、いざその水準が目の前に迫ってから現実を思い知る。
本来、頭のいい優秀なはずの人材でも、そんなことすら分からなくなるのがリスクのあるこの世界です。
自分が信頼できると感じられる運用者は、損失が先行した時点でまずは「なぜやられたのか?」をしっかり向き合い、自分なりのリセット、立て直しを図ることができる運用者です。
相場が見えていない、アプローチ自体が間違っているから損を出したのに、その原因や理由とまともに向き合いもしないまま、ただ取り返さなければとリスクを振り回す。
それじゃド素人…ですよね。
新人や若手ならまぁそんなもんでしょう。
知識も経験も、マーケットを見る目も、勝負勘も、全てが未熟なんですから。
大事なことは自分が未熟であることを自覚することです。
新兵に銃を持たせて前線に立たせる。
「俺は敵を倒せます!」
と根拠のない自信をもって突撃しようとする部下。
相手がどういう敵か、どういう戦況なのか、地形、天候、様々な要因を俯瞰してみることも出来ていないまま、なぜか自分は勝てると思い込んでいる。
まぁそれぐらいの気概はあっていいと思います。
まずは勝負してくればいい。
ただ死なない程度に…ね。
敵の銃撃を受けて、怪我を負うぐらいまでに留めていれば、傷を治し、なぜやられたかを考え、自分の愚かさと向き合い、怖さも知ることができれば、そこがスタートラインです。
だから損が先行した時点で、一度しっかり立ち止まり、取り返したいという自分の都合ではなく、なぜやられたのか、何を見ておけばよかったのか、そのときの判断や行動を振り返り、反省し、修正を繰り返していく。
その積み重ねが成長につながり、たまたま相場に乗れただけではない、本当の強さを持った運用者になっていく。
相場で負けることなんてしょっちゅうあるんだから、そこからの立て直しや乗り越え方が重要になる。
その立て直しや、修正をする余裕を残すためには「リスク許容度」「損失限度額」の限界近くまで初期段階で損を出したら終わっちゃうんですよね。
そこから反省しても今更…になってしまう。
そのリスク限度額の50%未満なら、まだ勉強代と割り切って次を考えてもいい。
負けた要因と向き合い、相場の何を見誤ったのかを整理したうえでファイティングポーズを取り続ければいい。
でも50%以上の累積損失が出ていたら、もうイエローカードでしょう。次は退場ですから。
その時点でいったん仕切り直し、相当リスクを抑制しながら安定的に勝てるプロセスを再構築していかないといけない。
与えられた運用額をフルに使う必要もないし、手が合っていない、相場が見えていないのなら、完全に一度ストップするのも一つのやり方でしょう。
なんにしてもブレーキを一回かけないといけない。
ノーブレーキでそのまま突き進み、限度額の90%程度までいったら、もう立て直せる可能性はほぼ失われる。
あと10%やられたら退場、その範囲のリスクで90%を取り返さないといけない。
どう考えても無理筋の勝負です。
リスク許容度、損失限度額は「そこまでやられていいよ」という一線ではありません。
「そこまでやられたら退場だよ」という一線です。
その範囲内でリスクをコントロールし、損失が先行している状態ではリスクを抑制し、立て直せる余裕を残した状態をなんとか維持しながら、勝負どころを待つことも大事なことです。自分がまだ未熟だと自覚するなら、地力をつけて勝てる自信が持てるまで我慢することも必要でしょう。
相場は大自然と同じ。
常に変化し、予測も難しい。
必ず誰しも間違えることがある。
簡単に儲かる相場もあれば、難易度の高い相場もある。
今の相場が勝負すべき局面なのかどうか。
それも見えていないまま、損を取り返したいとか「自分の都合」でリスク振り回していても、追い込まれるのは目に見えてる。
誰でもうまくいかない時もある。
そんなときこそ運用者としての地力が試される局面。
損を取り返したいからリスクを振り回す運用者。もし取り返すことができたとしても、それは運がよかっただけでしょう。
損と向き合い、その原因を考え、自らを修正したうえで次につなげられる運用者こそが、運に左右されず、継続性と再現性をもって利益を生み出す力を持てる。
若い運用者達には、そう成長していって欲しいからこそ、「リスクの限度」を勘違いして退場に追い込まれるようなことだけは避けて欲しいと願っています。