ND倍率が6年4ヶ月ぶり低水準という下記の記事。
日本株、出遅れ感強まる ND倍率、6年4カ月ぶり低水準
確かに米国株が(指数によっては)最高値更新してきているような状況にも関わらず、日経平均株価の上値は重く、出来高低迷も相まって、市場の雰囲気はもっとよくない印象。
ただこういった検証をする際に「日経平均株価」を使うこと自体がどうなんだろう?
と思って久しかったりします。
古くは2000年4月の「日経平均採用銘柄大量入れ替え」から(これもしかすると東証一部の上場基準関連で指数構成銘柄の大幅な変更が市場に与えるインパクトを学ぶ意味でも知っておいた方がいいことだと思います)、日経平均株価という株価指数が、本当の意味で日本の株式市場を適切に表しているのかどうか?という疑問を持って以降、ずっと感じていたことです。
個人的には市場全体の動向を適切に把握するためには、TOPIXを基本とするべきと考えています。
下のチャートはNDレシオ(日経平均株価÷NYダウ)とTR倍率(TOPIX÷Russel2000、その言い方が適切かどうか知らんけど作ってみた)を比較しています。基準を揃えるために、どちらもリーマンショック後の2009年1月を100として示したものです。
この数値が低ければ低いほど、米国株に対して日本株がアンダーパフォームしていることになります。
TR倍率(TOPIXとRussel2000)でみると、ND倍率よりもだいぶ低迷しているのが見てとれます。
実際の日本の株式市場の雰囲気はこっちの方が近いんじゃないかなぁ。

参考までに、NYダウとS&P500とRussel2000を比較したチャートも出しておきます。
こっちも2009年1月を100にしてます。
NYダウとS&P500は高値更新云々と言われていますが、Russel2000はまだ2018年8月の高値からは相当距離があります。
米国株については、全体を見ていくにはRussel2000を見た方がいいのかなと思ってもいるので、こっちを使ってみました。
で、日本を代表する株価指数である日経平均株価とTOPIXを比較したものがこちら。
日経平均株価は、現時点での構成銘柄比率を見ても、ソフトバンクとFリテで16.63%も占めてしまっている株価指数。
ITバブルの頃は、ソフトバンクや光通信(東証一部時価総額でトップを占めた時期がある)が日経平均株価には採用されていなかったから、IT「バブル」から取り残され、それに追いつかんと2000年4月に市場の需給や現場を配慮せずに行った大量入れ替えでTOPIXに比べて2000円前後も大きな下落をする事態を招き、ITバブル崩壊の一つのトリガー・象徴にもなった。
確かに、先物市場はこっちが早い段階から発展したので(90年代に裁定取引とかしやすかったのもあって流動性が相対的にかなり高かった)、株価指数としてはこっちの方がメジャーと見られがちですが、やはり市場全体の状況をより適切に示しているのはTOPIXだと思います。
実際にベンチマークとしてはTOPIXを使っているところの方が多いですしね。
で、その二つの株価指数。2013年ぐらいから急速にパフォーマンスに差が出ています。
これが先ほどのND倍率とTR倍率の乖離にもつながっているのですが、日経平均株価が市場全体のセンチメントを適切に示していないのではないかと思うもう一つの理由が「日銀ETF買いの影響」。

こっちは説明いらないと思いますが、NT倍率の推移(日経平均株価÷TOPIX)と日銀のETF買い累計額を併記してみました。
確かにTOPIX型の購入額を増やしたりはしているものの、採用銘柄数自体が少なく、構成比率も偏っている日経平均株価に対しては「歪み」を与えている大きな要因の一つであることは確かだと思います。
合わせて、マイナス金利という金融緩和政策が与える銀行収益へのネガティブ・インパクトも考慮しないといけない。
TOPIXに占める銀行セクターのウェイトはかなり高く、銀行株が伸び悩む理由の一つにも日銀の金融政策が影響していたりもする。
昨日、外資系証券のエコノミストの方とお話しする機会をいただきました。
FRBの金融緩和が今年どうなっていくのか、ECBは?日銀にはどういった手段が残されているのか?
など話しながらも、株式村でも債券村でも、ここまで日銀の影響力が強くなっているんだなぁと改めて実感。その政策上のポイントは「為替」かなという話になりましたが、どの市場においても各国中央銀行の金融政策依存度が高くなっているのは間違いなく、最近では「中銀バブル」という言葉まで踊り始めました。
一方で、中銀が持つ貨幣発行権と金融政策手段に大きな影響を与えかねないクリプト・カレンシー(仮想通貨・暗号資産)がここにきて急速に値を上げ、Facebookも動き出そうとしている。
これから十年二十年先、金融の世界は大きな変化のうねりに飲み込まれていくのかなと感じる今日この頃です。