株の中長期運用で、大雑把に分けるとロングオンリー、ロングショートなどがある。
ロングポジションにたまにショートもやるとか、先物使うとか、いろいろと細かいことを言えばキリがないのであくまで大雑把に。
ロングオンリーは基本的に「買い」だけでポジションを作る。
そのため相場全体の上げ下げの影響も受けやすいし(βリスク)、その分流れに乗れれば大きなリターンも得られる。
日本では投資信託(ファンド)といえば、このロングオンリーが圧倒的に多い。「株は買うもの」というイメージが強いのか、なんなのか分からないけど…。
ロングオンリーのアクティブ投信に投資をしていて、株価全体が下落したとき損をしたからといって文句を言う人がいる。正直、意味不明…。そういう投資商品に投資してるんだから、ベンチマーク(インデックス)を最終的にオーバーパフォームすることが出来ていれば、そんな文句を言う筋合いじゃない。ベンチマークを思いっきり下回っていたら、そりゃ文句も言いたくなるだろうけど。
少額投資でより大きなリターンを得たい場合は、ロングオンリーというアプローチが合理的だろう。ただし、その場合は投資タイミング(株価全体の水準)なんかにも十分な配慮が必要になるし、それがよく分からないという人は分散投資なんかも一つの手段になる(ただし現金取引ベースで)。これに信用でレバレッジをかければ、より期待リターン(リスク)も大きくなる。なのでリスク許容度に対して、比較的高い利回りを望む人は自ずとこういったアプローチになってくるだろう。
また投資を行うという意味で、社会的意義もある。資金需要が高い若い可能性がある企業に投資を行い、その企業の成長に貢献する。それによって自らも利益を享受する。
それはそれで充分に素晴らしい動機だと思う。
ただ相場全体の上下によって、損益がブレやすいことは理解しておかなければならない。
つまり月間損失限度額が定められている証券自己や、お金の色(リスク許容度)によっては向かない投資手法になる。どんなにいい銘柄群を買っていても、相場全体が調整する局面で一定額の評価損が出るのはしかたがない。そのときに月間損失額に抵触し、ポジションを売却せざるをえなくなったらもったいない。
プロの運用者ならば、自分自身が与えられている環境やリスク許容度に自分の運用アプローチを最適化させて、その資金を最大効率で利益につなげていくことが使命になる(投資家・会社が理解を示し、ルールを変えてくれたりすれば話は別)。
一方で、ロングショートはヘッジファンドでは最も一般的(日本株では特に)な運用手法だ(ヘッジファンドにおいてはロングオンリーの方がマイナーなイメージがある)。海外の投資家とか、グローバルに運用ビジネスをされている方と話していて、日本と大きく違うなと感じるのがここ。
「株は買うもの」とか、そういう先入観はなく、運用ストラテジー自体を商品として見る。βニュートラル(売りと買いのポジションをコントロールしてβリスクをゼロに調整している)をうたっているヘッジファンドも多い。それらのヘッジファンドは、相場全体の上げ下げによってリターンを取るのではなく、ロングポジションのα、ショートポジションのα、つまり銘柄のピックアップ力によって収益を上げることを目的としている。それによって年率どれぐらいの期待リターンと、リスクを取っているのかを投資家はみたうえで投資判断を行う。
ちょっと不思議なのは、「ヘッジファンドの方が投機的」と思い込んでいる人が多いこと。規模があまりにも大きいから、マーケットへのインパクトが大きいのでそういったイメージになってしまうのか、メディアがそういった誤解を誘因しているのか。
書いた通り、ロングオンリーに比べれば、ロングショートはβリスクを抑制している分、常識的に考えてリスクは抑えられている。「ヘッジ」しているファンドなんだから当たり前だけどw
これらの中長期運用は、短期運用に比べて圧倒的に規模の拡大は追いやすい運用手法だろう。
あなたがもし将来ファンド運用を目指しているならば、こちらを選択した方がいいとは思う。お金の色がそれを許してくれるのならばだけれど。
あとは「投資対象とする銘柄群(ユニバース)」による違い。
ロングオンリーにせよ、ロングショートにせよ、おしなべて大型株中心に運用すれば、リスクも減る代わりにリターンも落ちる。ある程度のリターンを上げようと思えば、中小型株も入れていかないといけない。でも日本株だけでやっていれば、中小型株だけでは流動性リスクなんかもパフォーマンスに影響を与えやすくなってしまう。
どれぐらいの期間でそれをやるのかにもよるが、投資期間が長ければ長いほど、ミクロのファンダメンタルズを土台にし、その企業の成長であったり、変化を捉えにいく。そこにはその成長シナリオであったり、なんらかのストーリーが描けているはずだ。
ロスカットすべきポイントは、そのシナリオやストーリーが崩れたとき、が基本になるのかな。
もちろんそれ以外の要因で切らざるをえない場合もあるかもしれないけれど。
リスクとリターンの特性は、運用期間や投資手法(ストラテジー)によっても違う。
まずそこが合理的に整理できていないと、損切り(ロスカット)なんてまともに考えられるわけがない。
「何%損したら切る」
というのは、自分なりにリスクとリターンを整理して、適切にロスカットラインを設定することが出来ない人が用いるべき次善の策ぐらいに思っていた方がいいだろう。
それすら決めていないよりはマシというところ。
証券会社やファンドでもそういったルールがある場合もある。
それは、中には損を引っ張り続けてエライことになってしまう人がいたりするから、そういった人が引き起こす損から会社やファンドを守るためにルール化されていることが多い。
損切り。
これは自分を守るためにも必要な手段だ。
勝ち負けのある世界で、勝つことしか頭にない人はどこかで足元をすくわれる。
負けともしっかり向き合い、守るべきときに守りが出来ないと、どこかで退場させられることになる。
もしあなたが100%の勝率で勝てるのらば話は別だけれど…。
とりあえずいったんこのシリーズ終わります。