学生時代、自分は「落ちこぼれ」だった。
本当にどうしようもない成績だったと思う。
大学も無名といっていい大学だったし、学部学科も経済は関係ないし、理系でもない。
さらには浪人も留年もしていた。
勉強そっちのけで、自転車のロードレースや部活動、バイトに夢中になっていた。
オマケに、恥ずかしながら自分は就職するまで「ディーラー」という職種を知らなかった。
個人投資家株の売買といえば、昔にどこやらの営業マンにそそのかされて親がNTT株の高値をつかまされたことぐらいしか聞いたことがなかった。
まぁ今のようにネット証券の存在によって、株の売買が身近なものになった時代とは違うといえば違うのだけれど。
でもそんな自分が新卒でいきなりデリバティブ部門に配属され、オプションのディーラーをやらせてもらえた。
これはとてつもなくか細い可能性が繋がった結果だった。
ちょっと思うところがあったので、その頃の自分のことを書いてみようと思う。
時代背景も違うし、あまり参考にはならないかもしれないけれど、今就職活動をしている人たちに何か伝わるものがあれば。
『就職氷河期』と言われた時代。
大学4年生になり、こんな自分でもどこか雇ってもらえるならそれでいい、ぐらいの気持ちで送られてきたDMとかをベースに説明会いったり、面接受けたりをしていた。
なぜか受けた会社の採用プロセスがトントンと進み、内々定というところまでこぎつけたときに、少し余裕が出来たせいかもしれないけれど
「本当にこれでいいのか?」
という気持ちが少しだけ沸いてきた。
特にその業界や職種に興味があったわけでもなく、どことなく流されるまま。
こんな自分でもチャンスをくれるならそれでいい。
というような気持ちだけで就職活動をしていたから。
成績が悪いこともあって、あんまり行きたくなかった大学の就職室にこそっと行ってみた。
当時、経済には興味があったから、日経とか読んでいたし、ニュースなんかでも経済関係のことには興味を持って見ていたから、まっさきに「金融」のジャンルの書棚にいき、そこで募集案内などを見ていた。
そのときに声をかけてくれたのがそこの室長さん。
その方がいなかったら、自分はこの世界には来ていなかっただろう。
そこで室長さんと二人で色々と話をした(させられた?)。
自分の資料などを見て、室長さんはこう言った。
「君の成績はひどいもんだ。けど話してみた限り頭が悪いわけではなさそうだ。もし金融業界を考えるなら、学歴や学閥ではなく、実力主義で評価してもらえるところがいいと思うよ。自分なりに考えてみて、一週間後にもう一度話そう。」
そして勧められたのが「証券」と「消費者金融」だった。
帰りに本屋にいって(当時、Amazonとかなかったもんで)、「証券」に関連しそうな本を片っ端から買って帰った。
次に室長さんに会うまでの一週間、二十冊近く読み漁った。
今、思えば何も知らないくせに、訳の分からん本を読んでたなと我ながら思う。
眠い目こすりながら、スワップの本とか読んでたし(笑)
そして一週間後、もう一度室長さんと話すことになった。
そのときに室長さんは目を丸くして
「一週間でそこまで勉強してきたのか!?君は絶対に証券にいった方がいい!」
と言ってくれた。
そこで二人で資料をめくりながら、受けるべき証券会社について相談させていただき、3社ほどピックアップして活動を始めた。
なぜかそこでも就職活動自体はトントン拍子に進み、1社は早い段階でお断りを入れ、未上場の地場証券から内定をいただくところまできた。
そこで、もう1社受けていた東証一部上場証券の人事の方にお電話を入れて、すっごい緊張しながら
「○○証券さんで内定をいただけましたので、お断りを…」
と言ったところ、今からでも来いと言われて、その会社の人事にお伺いすることになった。
『怒られるのかな…』
という覚悟でいったら、
「今、ここで内定出すから、先方を断ってくれ。」
とのこと。
びっくりしつつ、それでは先に内定いただいた会社さんに失礼になるからとお話したものの
「上場会社が内定出すって言ってるんだから、そっちの方がいいだろう。」
とばかりに強く言われ、
「1日だけお時間をください」
と言ってその場を立ち去った。
帰りに就職室の室長さんに電話を入れて相談した。
その方の判断は「上場証券」の方だった。
その後、両社に電話を入れて自分の意思を伝えた。
地場証券の方からは、ムッチャ怒られた。
「君のせいで一人断ってるんだぞ!」
平に謝るしかなかった。
でもそんな大学から、一部上場証券に内定をもらえたということを誰よりも喜んでくれたのは、その室長さんだった。
その後、大学でも就職の成功談として、沢山の後輩たちの前で体験談を話させられたりした。
まぁ自分のような落ちこぼれでも、希望を持って頑張ればチャンスがあるんだということを後輩たちに伝えられた…のかな(^_^;)
当の自分自身は嬉しいというか、キョトンとした感じ(笑)
「なんで俺なんかが受かったんだろう?」
そんな中で内定をもらった会社とのやり取りが始まった。