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【トレード】ディーラーって若くなければやれない?

「ディーラーって若くないとできない仕事ですよね。」

という言葉や質問をされることがあります。

自分はそうは思いません。
年配の方でも立派に一線で戦っていらっしゃる方もいますし、年齢がどうのこうのというのとは別の問題なのだと思っています。

「成功体験」が邪魔をするのだと思っています。
うまくいっていたやり方・手法。
それであれだけ儲かったという体験。
それが「変化」を受け入れ、自分のやり方・手法を変えることを阻害するのだと思います。

市場は変化します。
場立ちがいた頃、日経平均先物と日経平均採用225銘柄との間での裁定取引は中小証券も含めて活発に行われていました。
自分がこの世界に入る前には裁定取引で数百円のサヤが抜けたなんてこともあったそうです。
それがシステム化され、高速化され、裁定取引は(一般信用取引で貸し出すための)株の在庫を確保する手段となり、中小証券はほぼ全て撤退し(90年代後半)、今や外資系や大手、銀行系だけが裁定取引をしています。

場立ちがいた頃、場電と呼ばれる電話回線を通じて本社にいる発注担当者が受け取った注文を口頭で伝え、それを場電担当者が手サインで場立ちに伝え、才取会員である実栄証券(自分がこの世界に入った頃はすでに一社に統合されていた)が他の注文との付け合せを行い、注文が成立する。それを場立ちが手サインで場電に伝え、それを場電が本社に伝える。顧客注文であればそこからさらに営業担当者に連絡がいき、その担当者から顧客に約定内容が伝えられる。
それが今やミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒と目にも止まらぬスピードで発注から約定までが完了する時代になりました(瞬きのスピードが100~150ミリ秒)。

そういった時代の変化、環境の変化は相場を変えていきます。
新しい時代、テクノロジーの産物がHFT(超高頻度取引)といえるでしょう。
そんな「相場の変化」に適応していくためには、自分のトレードのやり方・手法を変えていかなければならないはず。
必ずというわけではありませんが、環境依存度が高いトレード手法であればあるほど環境変化には適応させなければならないはずです。

直近であれば「呼値適正化」もそうでしょう。
それらの対象銘柄を得意としていた日計りディーラーも悪戦苦闘しているはずです。

そして地場証券が得意としていた「日計り」「板張り」「一カイ二ヤリ」はHFTと真っ向からぶつかる手法。
市場の高速化(処理速度の向上、コロケーションやプロキシミティ)は機械に優位をもたらし、同じような瞬間的な取引を得意とする人間を苦しめました。

本来ならばそういった「相場の変化」に対して、トレード手法を変えていかなければならないのですが、過去にそれで大きく稼げていた自分がいるとなかなか変えることが出来なくなります。
見るべきものも変わるし、考え方やタイミング…ある意味まったく別の思考に切り替えなければなりません。
それには多大な努力も必要になるし、過去の成功体験が邪魔をすることも多い。
年を取ると頭が固くなる、億劫になるというのが生物学的に証明されるものならば確かに年配の人ほど適応能力は落ちていくのかもしれません。

でも自分のトレード手法をその時々の時代にマッチしたやり方にアジャストできる人ならば、高年齢だろうが、ベテランだろうが戦えると思うのです。

なので「ディーラーって若くなければやれないですよね?」という標題の問いには「否」と答えるようにしています。

【ビジネス】誰のための取引時間延長なの?

「東証、「夜間取引」から「夕方取引」へ方向転換か?
http://www.nikkei.com/markets/kabu/marketsnews.aspx?g=DGXLASFL29H9C_29102014000000&dg=1

この記事をみて正直情けなくなりました。
誰のための時間延長論議だったのでしょうか?
本来、こういった市場の制度変更などは「市場参加者」のためであるべきもの。
15時~17時って誰のためなの?

どうせまた香港とかシンガポールとかアジアから日本株やってる人にはメリットがあるとか言うのだろうけど、そもそも一時間の時差がそれほど大きな負担になりますかね?それでこれまで日本株に見向きもしなかった投資家が取引するようになるほどのことでしょうか?
自分もシンガポールで取引していたときは日本時間に合わせて起きて取引するのが日常でした。その頃、どちらかといえば朝一時間遅くして欲しいとは思ったけど、もし大引けを伸ばされて、朝早くから来ているのにただ勤務時間長くされるのは勘弁して欲しいところですね。
どう考えても「アジアからの取引のため」という主張は「取引時間延長」のためのこじつけに聞こえてしまいます。

サラリーマンなどの兼業トレーダーの方が参加しやすい時間帯の夜間取引。
「相場は夜動く」ことが多くなってしまった日本の市場。欧米市場が動く時間帯、海外ニュース、経済統計などの変動に市場参加者が対応出来るようにするための「夜間取引」じゃなかったんですかね?

決算発表が15時に集中しがちな日本企業。それによって株価が海外市場やPTSで夜間に動いてしまう。確かに17時までやればそれは取引機会を市場参加者に与えることにはなるかもしれない。でもそれならそもそも決算発表の時間を流動性のある取引時間中に指導・要請すべきでしょう。

ただ今回の「夕方市場」は取引時間を延ばすという東証側の都合だけで、本当に市場参加者の声を聞いているとは思えなくなる話です。

夕方までザラ場(その日の約定)を続ければ、バックオフィスや決済業務に関わる人達は当然残業。清算機関の処理時刻も夕方にズレ込む。当然、朝から毎日残業させれば労働基準法に引っかかるからシフト制、交代制が必要になる。仲介者である証券会社やバックオフィスベンダーの負担が増えるのは同じことです。
でも仲介業者である証券会社がただ負担が大きいと反対するのもおかしい。
顧客である市場参加者にニーズがあるかどうかでしょう。

市場参加者の声を聞き、そこに向き合って市場運営をしていかなれば証券市場は廃れていってしまう。

「呼値適正化」も一部のバイサイドにはメリットがあったと思いますが、個人投資家、ディーラー、HFTでさえもネガティヴだった。シェアを伸ばしてきたPTSへの対抗策にしか感じられないのです。

取引所は株式会社化されても公の利益を無視してはいけない。
「取引所の都合」が「市場参加者の利益」に優先されてはいけない。
どこか頭だけ理屈だけでアレコレとやっている印象が拭えないのです。

なんのための「取引時間延長なのか?」「誰のための取引時間延長なのか?」。実際に市場参加者の立場に立って考えて欲しいと思います。

そのうえで本当に市場参加者のニーズがそこにあるのなら「夜間取引」やりきればいいのではないでしょうか?そして仲介業者である証券会社は対応したくなければしなければいい。でもそこに市場参加者のニーズがあったなら、対応してくれる証券会社に顧客は口座を移すだけでしょうから。

【ビジネス】地場ディーリングの存在価値

自分は今、とある地場証券のディーリング部長として働いています。

今年の3月まで20年間は地場証券の「ディーラー」としてやってきました(一時期ヘッジファンドを作ろうとトライしたこともありましたが)。
1990年代から様々な移り変わりの中で、様々なものを見てきました。

ちなみに「ディーラー」という言葉は日本独特の呼び方です。外資系では同じく自己勘定取引を行うトレーダーのことを「プロップ・トレーダー」と呼びます。海外の方に「ディーラー」と言うと車売ってるとでも思われてしまうかもしれません(笑)

外資系では多くが2010年に成立した「ボルカー・ルール(ドット・フランク法の一部)」により自己勘定取引を禁じられ、ブロップ部門を閉鎖もしくは外出し(ファンド化)してきました。

国内系はというと、純粋に相場観でトレードできる場所はそれほど多くはありません。そういう意味では自分が生きてきた地場証券の「ディーリング部門」はとても貴重な存在です。
アストマックス社のようなプロップ・ハウスもいくつかありますが、決して沢山あるというわけではありません。まぁディーリングしかしていない地場証券はある意味プロップ・ハウスと同義かもしれませんけど(^_^;)

お金もない、経験もない若者が運用の世界を志すとき、チャレンジできる場所は日本にはそれほど多くはないのです。
中には一生懸命働き、お金を貯めて、個人投資家としてチャレンジし、大成功を収めている人もいます。ただそれはほんの一握り。

そんな若者たちが運用の世界にチャレンジできる場所として、自分は今いる場所を守り育てていかなければいけないと思っています。それがどんなにちっぽけな存在であったとしても。

日本には世界二位を誇る個人金融資産があります。
これは見方を変えれば「資源」です。
素晴らしい「ものつくり(製造業)」によってその資産を作り出した日本。
しかし、その資産を金融・運用の世界で活かすことは出来ていません。
そういったことでお金を儲けることをどこか「悪しきこと」と思い込んでいるこの国だからなのかもしれません。
でも資本主義国家にあって、その考え方はどこか自己否定的に感じるのです。

この国のポテンシャルはもっと高いはず。昨日お会いした大手HFTの方は日本は「ビジネスに対してフレンドリーではない」と残念そうに言われていました。
この国の個人金融資産という資源を活かす。
金融・運用の世界をもっと伸ばさなければいけないと思うのです。

以前、自分がチャレンジしたファンドに投資をしてくださった国内の資産家の方がおっしゃっていました。
「自分のような創業者、資産家は日本には沢山いる。でも預けたいと思える運用者が育っていない。」

一方で、自分はとても優秀なディーラー、個人投資家を知っています。でもそれほどまでに大きな資産運用をこなせる人は見たことがありません。
頂点を高くするためには、その裾野を広げなければならない。
お金もなく、経験もない若者が、ただ夢だけを持って全力で運用の世界にチャレンジできる場所を守り育てることが今の自分のやるべきことだと思っています。
そしてその点と点が線となったとき、いつか日本からもウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスのような運用者が生まれるかもしれません。そしてそのときには金融ビジネスの中心は香港やシンガポールではなく、日本であって欲しいと願っています。

そんな大層な夢を見ながら、今小さな一歩を踏み出しています。

まぁ自分が生きている間にはないかもしれませんけどね(^_^;)
ちょっとした(本気でみている)夢物語でした(笑)

【ビジネス】HFT大手の方とのミーティング

今日はHFT大手のアジア責任者の方とミーティングをセッティングしていただき、意見交換をさせていただきました。
自分なりに勉強しているつもりではあっても、こうして直接話をして意見を交わせる機会というのはとても貴重でした。

「ビジネスに不向きな日本」という言葉に
『そうなんだよなぁ』と同感しつつ
日本を変えていかなければいけないと改めて思いました。

あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ、税金も高ければ、規制も厳しい。
規制に至っては法律で明文化されていないことでも実務レベルでは色々と突っ込まれる。
ここ数年ぶつかってきた課題。

「在宅ディーリング」

金融庁の(銀行向け)検査マニュアルには「リスクを抑制して行うべき」という一文がある。
本来ならば禁止ではないはず。
でも監督官庁や取引所の監督部門の方と話すと必ず言われるのが「目視での監視」。
「目視での監視」をコンプライアンス遵守の必要十分条件と考え、法律で示されているのならばともかく、お題目のように突っ込まれる。
そして日系証券のほとんど全てが「目視での監視は必要」と考えて在宅を禁止し続けている。

実際の現場では同じフロアにいるからといって「どのキーボードたたいているか」なんて見ていられない。
結局のところ、管理端末で発注・訂正・約定・取消、ポジション状況、損益状況をモニタリングしながら管理しているのがどこの会社でも実情だろう。
外資系証券では「authorized trader」という仕組みがあり、認可を与えられたトレーダーは外出先からでも取引可能だった。

日系証券だけがダメと思い込み、会社からのみの取引をしている。
結果、24時間化、グローバル化に適応できている会社は知っている限り一社のみだ。
正社員ディーラーのみでやっているからこそ実現できている交代制。
契約ディーラーが中心の会社ではあまりにも非現実的な選択。
今はDMAも普及し、在宅であっても取引状況はしっかりとモニタリングできる。
そんな(明文化すらされていない幻のような)規制と向き合って数年。
自分がシンガポールにいたときは当たり前のように外出先や自宅からも取引していた。

大手HFTや運用会社の多くがアジアでの拠点をシンガポールや香港においている。
その言葉が胸に残ったミーティングでした…(^_^;)

その他、色々なことを話し合えたけれど、その辺はまた改めて…。

【トレード】3つ目の「C」

3つ目の「C」とは「Concentration(集中)」です。

これは当たり前のことでもありますが、自分はちょっと違う捉え方をしていました。

自分の場合、短期トレードにおいてあまり「集中」ということを意識し過ぎると視野狭窄に陥ることが多かったからです。マーケットとの距離感・間合いをしっかりと保っていないと特定の銘柄の「板」にばかり目がいき、相場全体の動きが見えなくなる。先日書いた2つ目の「C」のところでも漫画を読んでいた…と書いた通り、ちょっと相場から引いて見るように意識していました。

「間合い」をしっかりと保ち、動くべき時は一気に動く。「スイッチが入る」のでしょうね。昔、「勝負している時のしがないさんには近寄り難い」と後輩に言われたことがあります。自分ではあんまり分からなかったことですが(^_^;)

分析・見極めの段階では相場全体を俯瞰する意識を保つこと。ただ勝負に出るときは「集中」する。もちろん引け後などにマーケットを分析したり、朝方に戦略を考えたりする時も少し違う形で「集中」していました。

昔のトレーダー格言に「一つのピットに集中すること」というのがありました。自分はある意味ではその言葉に逆らっていたのかもしれません。様々な運用を同時にしていたこともありましたから。



A証券時代の頃の自分の席です。
モニタだらけですよね(^_^;)
ま、当時インチ数も小さいし、液晶モニタも出始めたばかりだったので無駄に多かったってのもありますが(笑)
かなりのモニタで様々な商品を見ながらやっていました。
現物、オプション、先物…etc。
確かにその時期や環境によってどれが中心かは変えていましたけど。
これでは「一つのピットに集中すること」というのは明らかに守っていませんよね(^_^;)

人によって戦い方はそれぞれです。
得意とする戦い方によって求められるものや優先順位は変わってきます。
日計りのような短期トレードならばメンタルの強さや勝負勘、スポーツや賭け事なんかに強い人が向いているかもしれません。
ロング・ショートなどの長期トレードにおいては分析力が何よりも大切です。そのために労を厭わない努力、探究心などが重要になります。
プログラム・トレードなんかはまた別のオタク的、クリエイター的な要素が求められます(一応、自分もプログラムはそれなりに書けるので)。

どんな戦い方でも、やるべきことをやるときには「集中」する。
すっごく当たり前のことですよね。
そんな風に書きながら、子供のころに親や先生に「集中しなさい」と注意されていたのを思い出しました(笑)

【トレード】時代の変化

2010年1月4日にアローヘッドが稼働しました。
そこから日本の株式市場の景色は大きく変わっていきます。
HFT(超高頻度取引)と呼ばれる市場参加者の台頭。
そしてより高速な取引環境を提供するサービスであるコロケーションやブロキシミティの拡大。

それまでの国内証券取引所のシステムは酷いものでした。すぐに固まるし、遅延もしょっちゅう。
大証のシステムは一昔前(機械受注統計が14時発表だった頃)、注文が殺到するとすぐに固まって遅延。自分の注文が約定しているのか?取消が出来ているのか?すら分からない状態が数分続くこともありました。東証TOPIX先物は15時ちょうどに数百枚の注文をわざと1枚に分割して発注し、意図的に遅延を引き起こしているヤツもいたぐらいです。

そんな鈍臭い取引システムではどんなに高速なインフラや処理速度を持つサーバー、ルーターを持っていても無用の長物。実はその鈍臭い取引システムがHFTの参入障壁になっていたのです。
それがアローヘッド、J-GATEの稼働により様変わりします。取引所サーバーの処理能力が飛躍的に向上し、ようやく参入環境が整った日本の証券市場にHFTが一気に入り込んできたのです。

そしてその環境変化は板を目視かつ手動で日計り、板張りをするデイ・トレーダーや証券ディーラー達を直撃しました。
今までは取れていた指値を取れなくなり、高速に変化する板についていけなくなる。そして収益は著しく悪化していったのです。

地場証券のマネジメントもディーラーも多くはアローヘッドやHFTを批難しました。そのせいで儲からなくなったと。そしてその変化を悪と決めつけたのです。

自分はなんとなく幕末の日本を見ているような気がしていました。
「尊王攘夷」を合言葉に外国人を排除しようとするチョンマゲに刀を差した侍達。
そのせいで儲からなくなったという言葉にどこか違和感を感じていたのです。

米国でHFTのシェアが最大だった年っていつか知ってますか?



2009年です。
アローヘッドが稼働する前の年なんです。
2000年代後半に欧米市場で起きていることを知る努力をしていれば、アローヘッド稼働でどんな変化が市場に生じるかは容易に理解できたはずなんです。
その市場の変化にどう立ち向かっていけばいいのか?
地場証券のディーラーとマネジメントが共に考え、そのための努力や取り組みが出来ていた会社はごくわずかです。

アローヘッド以前と変わらずマネジメントは日計りを求め、オーバーナイト・ポジションに制約をかけ続けた。月100万とか200万とか稼げればいい、でもマイナスを出すなと制約をかける。その中でディーラーが取れる選択肢は恐ろしく少ない。結果として市場の変化に適応出来ず、多くの中小証券のディーリング部門が閉鎖や撤退、縮小に追い込まれました。

アローヘッドが稼働し、取引所の執行能力が向上することは「いいこと」です。注文が殺到する度に固まるシステムよりずーっとマシですよね(笑)
テクノロジーの進歩を否定し、それについていけないからといってそれを否定していたのでは思考停止です。

HFTはそのテクノロジーの最先端を走っています。そこに知識や技術、資金を投じています。
本来、それらは悪ではありません。
ただ一部にその環境優位性を悪用しようとするものや価格の透明性を損なうもの、売買のロジックが悪質なものが存在している可能性は高いでしょう。
問題はそれらの全容を把握し、一般の投資家と同じように監督・監視出来る体制がこの国に存在しないということなのです。

また話がそれてしまいましたが…(^_^;)

その環境変化を否定して、そのせいで儲からなくなったといっている限り、我々は絶滅危惧種です。

その変化の中で機能する運用ストラテジー(戦略)を再構築し、勝ち抜くことこそが我々が目指すべきものなのだと思います。そのためにマネジメントはディーラー達への制約を可能な限り排除し、ディーラー一人ひとりが勝つための取り組みを柔軟に出来る環境を作る。そしてディーラー達自身が勝ち抜くための努力をしていくこと。

自分達の世代、環境優位性を持っていたのは我々ディーラーでした。
市場にはいくつもの歪みや隙間があり、収益機会も沢山ありました。ある意味勝てて当然だったかもしれません。
今の時代に勝てているディーラー達は大したものだと思います。
環境が劣後していても勝つことが出来る。そんな後輩達を誇らしくも思います。

彼らと共に考え、新しい時代に勝ち抜ける戦い方を見つけ出していくこと。
マネジメントとディーラーが一丸となることが最初の一歩です。ただ「管理」のためだけのマネジメントではこれからの時代に立ち向かっていくことはできないでしょう。
「これからの運用がどうあるべきなのか?」を共に学び、研究し、考え、戦い抜くことが今必要なのだと思うのです。

【ビジネス】ディーラーを育てること

ディーラーを育てるって簡単なことではありません。

10人指導して生き残れるのはほんの数名。トップレベルにまで成長してくれるのはわずか1人か2人。

30歳台前半の頃、契約ディーラーの立場ではありましたが、会社に人材育成に取り組ませて欲しいと願い出て未経験者の育成に取り組み始めました。これまで十数名の若手を見てきました。今でも一線で活躍してくれている者もいます。残念だけれど、ディーラーとしての道を諦めざるをえなくなった者もいます。

自分は勝ち方・方法論を教えることはあまりしませんでした。自分のトレードやどういうところを見ながらマーケットを考えているのかなどを教えはしましたが、出来るだけうまくいっている他のディーラーにも話を聞いてこいと言いました。戦い方、勝ち方は色々ある。自分のコピーにはなって欲しくなかった。少しでも多くのものを見て、選択し、いつか自分なりの戦い方を見つけていってくれればいい。

相場に関する知識やニュースの読み方、考え方、そういったものを調べたり考えたりする習慣をしっかりと身につけさせること。ロクに分析もせずに板だけを見てトレードするのではすぐに限界が来る。そういったものはしっかりとやらせました。
チャートの見方や特性なんかも興味があるやつには教えました。そしてVBAも半ばやれといって教えましたね(笑)

一見、関係なさそうに見えますが、増え続けるデータを分析するうえで、VBA程度でも書きこなせれば武器になるからです。
自分が若い頃に、ロングショートやシステムトレード、オプションなどをやりながらアウトライトで先物も現物もこなせていたのは、そういった武器が役立ってくれていたからです。

自分の戦い方を見たければ見せましたが、その真似はしなくていいといつも言ってきました。
自分で考え、見つけ出したものでなければ「Confidence(自信)」を持つことが出来ないからです。

そこから育ち、成長し、会社のトップレベルのディーラーに育ってくれた者も何名かいます。
彼らは人を育てる喜びを与えてくれました。

一方で、道を諦めざるをえなかった者も何名もいます。
一人ひとりに「悔いはないか?」「やり残したことはないか?」という言葉をかけてきました。
精一杯やってきた結果ならそれでいいのです。
勝負の世界で勝ち続けるのがこの仕事。誰もが生き残れるほど甘い世界ではない。
結果がダメでも、そこで全力を尽くし、挑戦したことに胸を張って欲しい。
そして前を向いて次の道を進んで欲しいと思うのです。

お金もなく、経験もない若者が運用の世界を志すとき、地場証券のディーリング部門はその入口として守っていかなければいけない数少ない貴重な場所です。
世界二位の個人金融資産を持つ日本という国。しかし、金融・運用の分野では大きく遅れをとっています。欧米のヘッジファンドは数千億は当たり前、兆円規模のファンドもいくつもあります。日本のファンドは規模も小さいし、グローバル・マクロの運用をしているところも非常に少ない。今、話題のHFTも日本発のものはほとんどなく、欧米のHFTばかりです。

この国で運用の世界を志す若者にチャレンジする場を作っていく。裾野を広げていくことでいつか頂点も高くなっていく。そんな取り組みも大切なことだと思うのです。

お金がなくても経験がなくてもいい、熱意と夢だけしかないかもしれない、でもそれを形にしていけるチャンスはあっていい。かつての自分がそうであったように。
そんな思いも持ちながら、そんな入口として貴重な地場証券のディーリング部門をなんらかの形で守り育てていきたいと思って日々取り組んでいます。

【トレード】二つめの「C」

ちょっとご質問をいただいたので二つ目の「C」について書きます。
勝ったときの話をしますが、いつもヤラレ話ばっかりなのでご勘弁を(^_^;)


自分はプレーヤーとしての全盛期は先物の日計りが主でした。ラージで数百枚のポジションを何回転もして稼ぐ。1日で1万枚の売り買いを超えたことはありませんでしたが、多い時で8000枚強の売買をこなし、かなり大きなポジションを与えてもらっていました。

そういうと力で相場をねじ伏せるような「剛腕」をイメージされるかもしれませんが、自分は全くそんなことはありません。ポジションが小さかった時と同様に「流れを読み、流れに乗り、流れを取る」のが基本でした。

だからどんなにポジションが大きくてもマーケットにインパクトを与えるようなやり方は極力避けてきました。何回かに分けてポジションを作るようにしていましたし(それでも数回でしたけど)、出来る限りシンプルなトレードを心がけていました。
自分の場合、売買枚数が多い日は大体調子が悪い時でした。ほとんどが序盤でヤラレて取り返すためにバタついた取引をせざるをえなくなった場合でした。
いい時ほど枚数は少なく、値幅も引っ張れていました。

1日での最大利益は6千数百万ですが、この時は二回転ぐらいしかしていません。150枚のショート・ポジションを取り、急落する自信があったのでロスカット・ポイントを決めてそこから50枚ずつ2回ほど売り増して250枚のショートを作り、その後300円ほどの下落を取ることが出来ました。道中で50枚だけ利食って、あとはずっと空きのまま漫画を読んでいました(笑)
後輩に「こんなに相場動いているのに暇そうじゃないですか?」と突っ込まれたのを覚えています(^_^;)

でもテクニカル、需給…自分なりの分析から、今日は大幅に下がるという自信がありました。そしてロスカット・ラインは決めている。最大損失はいくら、期待収益はその3倍近い。あとはどちらかに達するまで見ているだけだったのです。当然、100円下げても50円戻すだけで1000万の損益のブレになる。端末に張り付いて、キーボードに指を置いていたら、つい買い戻したくなる。そう思ったから相場と間合いを取るために漫画を読んでいました(まぁ褒められた話ではないんですけどね(^_^;))。

相場が見えているときはブレずにゆとりを持っていられる。でもそれが出来たのはその裏付けとなる分析に自信があり、目の前の値動きからそれは間違えていないと信じるに足るものを感じられたからです。

一方で、相場が見えていないとき、分析に自信が持てていないときは値動きに踊らされ振り回されます。そしてその都度精神的にも揺さぶられる。結果、売ったり買ったりを無駄に繰り返してしまう。

その時のトレードは場中に考えてポジションを取ったわけではありませんでした。
毎日の分析の中で勝負すべきタイミングだと信じていたし、(先日書いたように)明け方に戦略をイメージし、場中はただそれが間違えていないことを確認しながら実行に移したに過ぎません。

ポジションの大小に関わらず、「相場の流れを読み取る力」が勝つために必要なのです(まぁHFTとかアービトラージャーとか「相場の流れ」なんて関係ない方々もいらっしゃいますが…(^_^;))。
そのための努力がしっかりと出来ていると「自信(Confidence)」が生まれます。それが二つ目の「C」です。

どんなにポジションが大きくても履き違えてはいけません。「自分で相場を動かす」「相場を力でねじ伏せる」「自分で相場を仕掛ける」なんてのは「自信」ではなく「過信」です。一見、カッコいいように思えるかもしれませんがそんなものは傲慢でしかない。

相場は自然と同じ。畏怖の念を忘れず謙虚に接しなければいつか思い知らされることになるでしょう。徹底的に相場を学び、調べ、研究し、考える。その中で見えてくるものがあったとき、その努力が「自信」につながるのです。根拠のない「自信」ではなく、その努力に裏付けられた「自信」はそう簡単には揺らがないものです。
長期投資において、「この銘柄のこの水準は安過ぎる」と判断して巨額の資金を投じるかのバフェット氏もそう信じるに足る分析や裏付けがあるからそれを実行出来るのでしょう。

「自」分を「信」じることが自信。それだけの分析や努力が裏付けとしてあるから信じられるのです。

勝ち方は人それぞれ。
戦い方も人それぞれ。
ただ強い人はそれだけの裏付けがあり、勝てる自信があるから評価損にも耐えられるし、強い意志を持って戦えるのです。

【トレード】ポジション枠の増やし方

最初から大きなポジションを与えてもらえるディーラーなんていません。
最初は小さな額から初めてそこから増えていく。
どんなに大物ディーラーと言われる人でもそれは一緒です。

自分はちょっと特殊でした。
最初の会社ではいきなり新卒でオプション・ディーラーからのスタート。
そのチームのチーフは比較的寛容にポジションを付与してくれました。

最初は先物(今でいうラージ)一枚で練習。
忘れもしないのはたった一枚の日経平均先物で50万円やられたときのことです。売り気配のまま500円も引かされたときは目の前真っ暗になりました。
新入社員の自分にとっては自分の給料の倍以上をすっ飛ばしたワケで…大変なことをしてしまったと感じたものでした(^_^;)
その頃はまさか未来の自分が毎日千万単位の損益のブレが当たり前になるとは想像もしていませんでしたから(笑)

ま、そんな失敗もありながらではありますが、それでもなんとか毎月プラスでしのぎ、それなりの利益を出せるようになっていきました。そしてオプションの枠、またそのオプション戦略がショート・ガンマを基本にしていたのでそのヘッジのため先物枠プラスアルファを付与してもらいました。そのおかげもあって1年目で毎月百万~数百万の利益は残せるようになりました。

その後、色々とあって転職(【回想録】参照)。最初は現物株で1億円の枠を付与してもらいました。そのとき初めて現物株をまともに触ったのですが、最初の月で初の1千万オーバーの利益を出せました。すっかり楽しくなってしまい現物株でいきたいなと思い始めたところで、そこのチーフから「お前には先物をやらせたい」の天の声。

そこからなんと先物一枚(想定元本で1千万ちょっと)に戻され、そこからが長かった(T_T)
ムチャクチャ厳しい人だったのでその後なかなか枠が増えることはなく、毎月これでもかと利益を出してお願いしても枠を増やしてもらえない。
NYダウの700ドル安を滅多にしないオーバーナイト・ショートで取り、日経平均先物で880円グチ抜いて初めて2枚に増えました(笑)
その頃にもっとやりたい、もっとやれるという欲求が溜まりに溜まったのでしょうね。そして何より「地力」をトコトン身につけさせられたのだと思います。そしてポジション枠を勝ち取るとの難しさ、その責任の重さを叩き込まれました。

そこからはトントン拍子にポジションは増えていきました。
その後、一ディーラーとしてチームから離れ、それまでに積み上げた地力が功を奏したのか、月2千~3千万程度の利益を取れるようになるまでには比較的容易にいきました。でもそこからが簡単ではなかった。

ポジション増やしてはもらっても、その分損益のブレも大きくなる。その頃の自分が心がけていたことは基本的に自分のキャパの120%程度のチャレンジを続けることでした。何度も損益のブレにメンタルが振らされる。でもチャレンジを続けなければ成長はない。何度もそれを繰り返しながら「攻める」気持ちを失わないように、でも「コントロール」を失わないように、自分に言い聞かせながらポジション許容度を増やしていきました。

でもある段階まで来た時。
その会社ではこれ以上、自分は成長することが出来ないと確信するに至りました。月間9千万円まではいくものの億の壁を越えられない自分。月間平均三千万程度の利益でトップだエースだと言われ、ぬるま湯に浸かっているような状態。さらにはその会社のディーリングが弱かったために自分が儲かっていても全体の損益状態によってトレードを制約されてしまう。「攻めない」理由がそこにはあり、自分に言い訳が出来てしまう、「楽」が出来てしまう環境でした。

「ここにいてはダメだ。自分の成長はここで止まってしまう。」そう確信し、自分よりすごいと思えるディーラーがいる会社にいこうと決意しました。自分より年下ですが、素晴らしいパフォーマンスを上げているディーラーがいました。彼にメールを送り、その会社に移籍を決めました。

その後は彼の存在に引っ張られながら、再度「攻める」姿勢を取り戻すことが出来ました。毎月億の勝負が出来るようになったのは彼の存在があったからだと思います。それでも月間トップにはなかなかさせてもらえませんでしたが(笑)

少なくとも「自分の限界」を自分で決めてしまって、チャレンジしなくなればそこでディーラーとしての成長は終わりです。それでいいなら構いませんが、せっかく夢を見られるこの仕事についているのにチャレンジしないのってもったいなくないですか?

明日の我が身を案じながら、「攻める」よりも「守る」ことで精一杯の毎日。引き際を考えるベテラン・ディーラーならそれでいいのでしょう。でも若い世代のディーラー達には「攻める」気持ちを持ち続けて欲しいと願っています。

「コントロール」を失わずに「攻め続ける」ことはとても難しいことです。それをやり抜くためにはその裏付けとなる「努力」が必要です。それは忘れずにいてください。

まぁ立場が変わってポジション枠を付与する側になった自分としては、みんなからの枠要請はいつも悩ましい問題なんですけどね(^_^;)
限りあるポジション枠をどう最適配分し、より効率的な運用が出来ているヤツに預けるのか?
みんなからの要望にどう応えていくのか?
中にはとてもワガママな要求するヤツもいますから(笑)

でもそれぐらいでいいんです。
「枠」を望むということは、そいつがもっと稼げる、稼ぎたい、成長出来ると自分を信じている証拠なのですから。
夢を追いかける後輩達の姿に頼もしさと期待を感じていますから。

【トレード】リスクとの向き合い方

ここまで「メンタル」のコントロールについて書いてきました。

自分は若い頃に上司に言われた「3つのC」の中でもこのControlを特に重視しています。
その中には…
メンタル・コントロール、リスク・コントロール、P&L(損益)・コントロール、…etc、様々な「コントロール」があります。
短期トレードではその中でもメンタル・コントロールが重要になってきます。
常に変動し続けるマーケットの中での瞬時の判断、行動が損益に大きな影響を与え、メンタル・コントロールがちゃんとできていないと、一つのトレードがきっかけでリズムを崩し、気づいてみたら「やらされている」状態に陥る…なんてことは短期トレードではよくあることですから。
ここでは「リスク(およびP&L)・コントロール」について書いてみたいと思います。

例えば、儲かっているときと比べて損が出ているときであなたのポジション量(リスク)はどう変わりますか?

①損を取り返すためにもより大きくポジションを取る
②まったく変わらない
③損が出てしまっているので小さくポジションをおさえる

さてどれでしょう?
自分はこう考えます。

①の人は危険です。
気を付けてくださいね。
2~3回うまくいったとしても、どこかでその全てを吐き出すような損失を出したり、再起不能になる恐れもあります。「損を取り返したい」という都合から「相場が見えていないから間違えた」のにポジションを増加させる行為はメンタル・コントロールのところでも書いた通り、自分の都合で相場を張っているのと同義です。

過去の部下にもいました。
月間損失限度額を大きく上回る損失を出して、ディーラーとして外さざるをえなくなりました。
損失限度額目前のところでめいっぱい逆張りでポジションとって、そのまま一気にもっていかれた結果大きく損失限度額を上回ったのです。
そいつはオレに怒られたときに「これまで2度ほどそれで助かってきたんで…」と言いました。
もうアウトです。
自分に与えられたポジションと損失限度額に対してその程度の意識しか持てていないのなら「人のお金」を預かる資格はありません。

②はまぁありですかね。
でもそれはリスクを取っているお金の「色」次第。
お金には「色」があります。
個人であれば最悪失ってもいいお金なのか、老後に必要なお金なのか、生活に必要なお金なのか、それとも借金なのか。
ディーラーやファンド・マネージャーなどのプロの運用者であれば、それは全て他人様のお金です。さらにそのお金には運用手法やルール、決済期限なども設けられている場合もあります。そのルールは鉄則です。例えば「月間損失限度額」は「損してもいい金額」ではありません。「これ以上は損しちゃダメだ」という金額なのです。それを勘違いしてしまっているディーラーは少なくありません。
自分は20年のディーラー人生の中で「月間損失限度額」をつけたことは一度もありません。当然のことだと思っています。6400万円の損失を出したときの限度額は7000万円。3380万の損失を出したときの限度額は4000万円でした。
与えられたルールの中でコントロールするのがプロの仕事です。
そのルールの中でリスクを取り、出来る限り効率的な運用をすることこそがプロの目的なんですけどね(^_^;)
好きなようにリスクを取っていいお金の色ならアリな選択でしょう。

さて話が若干それましたが…

負けている時、「損を早く取り返したい」という気持ちが生じるのはおそらく全ての人に共通しているはずです。
でもなぜ負けたのか?
相場が見えていないから。
自分が見誤っていたから。
のはずです。
だとするならば、自分が何を間違えたのかも理解出来ていないままポジションを取り続けることはよくないことです。
そして「損を取り返して早く楽になりたい」という自分の都合でリスクを増やすなど言語道断。

そして損が出ている時、どんなに意地になっていてもあなたの心には余裕がないはずです。
余裕がなければ評価損には耐えられない。
余裕がなければ相場も見えてこない。

負けているときはリスクを抑制し、小さな勝ちを積み重ねながら、見えていなかったものが何なのかを見極め、少しずつでも心に余裕を持てるようにしていくこと。負けがあなたの自信を傷つけたかもしれませんが、小さくても勝ちを積み重ねることがそれを癒してくれます。

そして儲かっているときはガンガン攻めていけばいい。
どんなに儲かっていても少し利益減らしたぐらいで文句を言うディーリング部長も少なくないと思いますが、それはおそらく自分で相場を張ったことがないのでしょうね。
1000万稼いでいて数百万減らしたからといちいち文句を言われて止められたのではディーラーはやってられないですよ(笑)

なんにせよ儲かっているときと損しているときの戦い方は変えるべきなのです。
そのコントロールが出来てこそ苦しいときも乗り越えられるのです。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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