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【市場雑感】実施後一か月経過した呼値適正化フェーズ2を分析してみる

東証呼値適正化フェーズ2(7月22日実施)から一か月が過ぎた。
その影響を手持ちのデータから分析してみた。

フェーズ2で呼値が変更されたのはTOPIX100銘柄のうち3000円以下のもの。現時点で3000円超はすでに1月14日のフェーズ1で呼値を「適正化」されているものとして除外する(ただし実際にフェーズ1での対象銘柄数とは若干異なる)。
現時点での手持ちデータを元にしているため、若干の相違があるかもしれないがご理解いただきたい。
TOPIX100銘柄のうち、現時点で3000円以下のものは58銘柄。

それらについて
フェーズ2以前 5月1日~7月21日(その間のメジャーSQ日は除外)
フェーズ2以降 7月22日~8月25日
の期間の売買状況を比較してみた。



当然といえば当然だが、取引回数は58銘柄中56銘柄で増加している。呼値が細かくなったことで注文がぶつかりやすくなっているのは確認できる。

ただ問題はここから…。
日中値幅は58銘柄中過半の37銘柄で縮小している。一見、値段が動いているようでいながら、トータルでの値幅は縮まってしまっており、短期取引を収益源としているディーラー、デイ・トレーダー、HFTなどにとっては収益機会が低下している(もしくはスプレッドの縮小により利幅が縮小してしまっている)といえそうだ。
さらに問題なのは売買代金および出来高の低迷だ。
フェーズ2実施後に売買代金が増加した銘柄は58銘柄中わずか16銘柄。出来高でみれば11銘柄まで減少する。

出来高が顕著に増加したのは(4188)三菱ケミカルと(4901)富士フィルム(エボラ関連)。どちらもフェーズ2実施後に10%以上の大幅上昇となっており、相場自体が活況になっているための増加要因が大きいとみるべきだろう。
そして東証がよくサンプルで挙げる(8411)みずほFGについては出来高・売買代金ともに20%以上の増加となっている。ただそれ以外の銘柄では…概ね減少している。つまり同銘柄だけをサンプルとして取り上げるのは適切な見方を損なうとみるべきだ。

「呼値適正化によって売買が活性化され、出来高・売買代金が増加している」という見方はどこをどうひっくり返しても出来そうにない。

同期間で各市場の状況を比較してみた。




TOPIX100が総じて減少していることもあり、東証一部は出来高・売買代金共に減少。東証二部、JASDAQグロースは大幅な増加を示している。
少なくともフェーズ2実施前後の相場を比較して全体の売買が実施後に低迷したからTOPIX100銘柄も出来高が低迷しているという見方はしづらい。

これらの状況を見る限り

「呼値適正化(縮小)された銘柄群が敬遠され、中小型を中心に売買対象がシフトした」

とみるべきだろう。
改めてこの状況をみて思う。誰のための呼値適正化だったのだろうか?

【ニュース雑感】都が税金で株の運用?

都が税金で集めたお金を株式などで運用するという話。

金融業界、運用業界、株式市場にとってはいい話だが…。

お金には色がある。

①自らの意思で投資方法を選択し、自分の資産としてリスクを理解したうえで投資したお金
②自らの資産ではあるが、投資方法の選択肢がなく、強制的に徴収されたお金
③公共サービスや国・地方自治体の運営のために国民の義務として強制的に徴収されたお金

運用の基本だと思うのだけれど、そのお金がどういう色が着いているかを理解せずに運用するのは明らかな間違い。
個人に置き換えれば
目先の生活に必要なお金なのか?
将来のために確保しておかなければならないお金なのか?
余裕のあるお金なのか?
それによって換金性、リスク、リターンなども勘案して投資配分は行われるべき。

①についてはリスクを理解して自らの判断と責任において投資を行うのだから損をしたとしてもしかたない。ただし、そのリスクをちゃんと説明しておかないと証券会社や運用会社は受託者責任を問われる。
②は要するに年金。効率的かつ合理的にベストと思える運用をすることが基本とはなるが、それで失敗したからといっても運用もせずにお金を寝かせておくわけにもいかないのだからある程度のリスクはしかたない。経済成長、インフレ…今の一万円が数十年後に等価値である保証はないのだから。何らかの形で運用されることは理解されるべきだろう。ただし、政治が短期的な視点で運用方針に作為的に介入するのはよくないとは思う。損が出たとしても、それはあくまで運用の専門家が最大効率を目指して取り組んだ結果であるべきだ。
③は税金。これはさすがにどうなんだろう?法に基づいて強制的にお金を徴収し、国民や都民はその運営に必要であり、義務だからとそれに従っている。そのお金を株などの運用に使うという。「効率的な運用」といえば聞こえはいいが、かつてバブルの時代に名だたる企業がその大義名分の下で金融・運用に手を出した結果、巨額損失を出してきた。それが「飛ばし」「損失補填」などの証券不祥事の遠因にもなっている。お金を集めるそもそもの目的が違う。お金の色が違う。そのお金でリスクを取ることの意味。

結果的に儲かった場合は誤魔化せるかもしれない。でも十年というタームで考えれば損失が出るときもあるだろう。そのときどうするのか?損が出たときの対処を考えていないのならば話にならない。相場の世界において負けたときのことを一切考えない人ほど危ない人はいないのだから。

リーマンショック前に「余裕資金の効率運用」ということを大義名分として運用のど素人に過ぎないある証券会社のマネジメントがリスクを取り、わずか二ヶ月程度で相当の損失を出した。自分はそれに怒り、その会社を辞めた。

今回の都のスキーム。詳細は分からないけれど同じニオイがする。何年か先にその運用失敗が様々な問題を生むかもしれない。
頼むから相場を甘くみないでいただきたいものだ…。
ま、そういう自分は都民ではないのですけどね(^_^;)
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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