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【相場雑感】インフレヘッジ?

「インフレヘッジ」
バブル崩壊後、そんな言葉が忘れ去られて20年以上の時が過ぎました。

インフレ=物価上昇=貨幣価値の下落を意味します。
物価が上がるということは、裏を返せば通貨の価値が下がり同じ1万円でも買えるものが少なくなるということ。

ヘッジ=リスクを回避する、もしくは低減すること。

つまり「インフレヘッジ」とは物価の上昇に備えるということです。

物価が年率2%上昇したとしましょう。
銀行に預けている預金金利は(多くみて)1%とします。
預金は1%しか増えないのに物価は2%上がる。つまりその預金の価値は実質的には▲1%目減りしていることになるのです。
給料も同じこと。物価上昇率と同じペースで増えればいいのですが、給料の増加ペースがそれを下回ればその給料で買えるものは少なくなる、つまり生活は苦しくなります。

今、世界的に先進国の多くが行っている過去に類を見ないほどの金融緩和政策は「デフレ退治」を目的に一定のインフレを意図的に起こそうとしています。

公的債務が大きい日本では税金などの国民負担は増えることはあっても減ることはないでしょう。そして給料が毎年安定的に2%ずつ増える企業(ベア=ベースアップ)や世代も限定的な気がします。
そしてゼロ金利・量的緩和をしているこの国では金利の上昇は起きづらい(というか急激な金利上昇は巨額の債務を抱えている日本政府にとっては脅威)。となると預金金利が急速に上昇して2%になるとは思えない。

給料の方はなんとかしようと国も企業に働きかけ、今年は大手企業を中心に応じたところもありました。ただ毎年となると…?そして中小企業の反応はあまり…。
そして預金金利も上がらないし、税金は上がる。
そんな中でも物価は上昇し始める。結果として預金していただけではジワジワと生活が苦しくなる。

そんなインフレに強いものが株式や不動産と言われています。資産の中に一部そういったインフレに強い資産を組み入れることで備える=インフレヘッジを行うのです。

年金が株式比率を引き上げるというのも今の金融政策を考えれば合理的な面もあります。ただ世界的な金融緩和が行われている中で日本の比率ばかり上げようというのはかなり政治的かつ恣意的な面も感じなくはないですが。日本株を買わせるという政治的な目的と結論ありきで運用効率の適正化が客観的にされているかは疑問が残ります。

ただ金融緩和主導でインフレを起こし、実体の成長を極端に上回るような株価上昇が起きれば、それはバブルです。アベノミクスは意図的にそれを起こそうとしているようにも見えます。

日銀による極端な金融緩和と国債、ETF(株式)、REIT(不動産)の購入。年金に株を買わせる(日本株の運用比率引き上げ)。
徹底的に金利は低水準に抑え込みながら、株や不動産を押し上げて資産価値の上昇を生み出していく。

本来ならば日本をビジネスのしやすい国際競争力の高い国にしていき、経済活動を活性化させて地力を高める。経済が活性化され、人や企業が集まり、成長力が高まる。その結果として、株や不動産が上昇し、物価も上昇し、当然金利も上がる。これが本筋でしょう。規制緩和や法人税減税、「第三の矢」と期待されるのがそのあたりになるのでしょう。

そこがどこか足りない。
議論ばかりで前に進まない。
少子高齢化や人口減という構造的な問題も抱えている日本。

そんな中で金融緩和主導で起きようとしている資産インフレ。
個人的には違和感はたっぷり感じるものの、久し振りに「インフレヘッジ」という意味での株式投資に光が当たりそうです。

【ブログについて】よろしくお願いします(申請ご面倒おかけしますが…(^_^;))

この週末思いもよらぬ沢山のアクセスとアメンバー申請をいただきました。

karinさんのブログでご紹介いただいたようでありがとうございますm(__)m

元々は業界の元部下や後輩たちへ伝えたいことがあったことからブログを始めました。
【回想録】として書いていた時期です。
その後、相場ネタや市場を巡る様々なことへの考えや思いを綴ってきました。

以前、フィスコさんの『週刊展望』でしがないディーラーの独り言というコラムを何年も連載させていただいていました。そこでは書きたいことを書かせてもらっていたのですが、新聞やテレビなどのメディア取材だと時間や文字数の制約から思ったことが伝わらなかったり、記者によっては恣意的にコメントの内容が使われてしまったりするので、思ったことを自分の言葉で伝えられるブログを使っていました。

ただブロガーとして有名になりたいわけでもなく、どちらかといえば伝えたいメッセージを思ったように書きたいというのが目的でした。思いっきりオープンだと書きたいことを書けなかったり、匿名の無責任なコメントなどに振り回されたりということも考えられたので、アメンバー限定記事にしています。

アメブロとmixi、Twitterは知人以外も承認はしています。
ただ本名が示されないSNSでは仕事絡みネタのみに限定しています(書きたいことがあったときだけアップしています)。
ネットで匿名だからと無責任なコメントや批判・誹謗中傷する人に関わるのは面倒くさいので(^_^;)

本名ベースのFBなどは公私分けずに書いてます(こっちはほぼ毎日何度もアップしてます(笑))。
ただし実生活で会ったことのある知人のみに限定しています(^_^;)

今回、ご紹介いただいたことでアメンバーになってくださった方、リクエストありがとうございました。
そんな自分のブログですが、よろしくお願いします。

また業界関係者であり、ディーラーとして20年戦ってきた経験も一応はありますので、聞きたいことや知りたいことがあったら気軽にコメントやメッセージをください。
投資家や運用者を育成すること、市場を楽しんでもらえるようにしていくことが今の自分の目標なので。

【雑感】40歳には戻りたくない?

すごく共感。

http://dot.asahi.com/aera/2014060400129.html

プレーヤーとして充実感、達成感を感じられた30歳代後半。月間億の勝負が当たり前になり、後輩達も育ってくれていた。でも時代の変化を感じ、このままでは地場のディーリングはダメになるという危機感から組織を変えようと取り組み始めた。

「契約である君は知らなくてもいいこと…」
リストラやルール変更など、様々な課題を自分に任せておきながら、自分の知らないところで進められていた案件。自分の耳に届いた時にはすでに大きな損失が生じていた。それを許すことができず、その会社を辞めた。

そこからはもがく日々だった。
いくつもあったプレーヤーとして好条件のオファーを断り、成功報酬を返上してゼロからディーリング部を作る道を選んだ。しかし、形にするには幾つものピースが足りない。そこではたった一人で戦う怖さや辛さも痛感した。

そこへ来たファンドを立ち上げてみないかというオファー。ブローカーの友人達の応援もあって前に進む決心をした。

一人で戦う難しさ。
ピークを過ぎつつある自分。
そんな不安が心の中にあったのかもしれない。
今、思えば最初は一人でやるべきだった。でも数名の仲間に声をかけて一緒にやる道を選んでしまった。

強いメンバーのはずだった。
実績から考えれば、このメンバーでダメなはずがなかった。
でもみんな思ったような力を発揮出来なかった。
そして自分もそれを守れるほどもう強くはなかった…。

そして大きな挫折。
その過程で仲間を巻き込み、傷つけもしてしまった。
いまだにあの頃のことは胸に突き刺さっているし、自分を責め続けている。

でもその後に沢山の人が手を差し伸べてくれて今がある。
その時に与えられた出会いがあって今がある。
ようやくやるべきことが見えてきた。様々なものを背負いながら、でも前を向いて歩いていこう。そう思える今がある。

自分一人の努力で目指すものを得られた30歳代。
壁にぶつかり、自らの力の限界を知りもがいた40歳前後の日々。
それがあったからこそ今がある。

でも確かに40歳の頃には戻りたくないかも(^_^;)

【市場雑感】GPIF改革について

GPIF(正式名称:年金積立金管理運用独立行政法人)は国民の年金を運用している組織だ。
厚生労働省が集めた国民からの年金を同法人が運用している。
つまりみんなの将来受け取る年金を運用している組織なのだ。
そのGPIFの運用について政治が口を出し、その運用基本方針を変えさせようとしている。
短期的には株価上昇につながり、株式市場はそれを期待してもいる。
ただ…どこか違和感を感じる。

安倍首相、GPIF運用見直しの「前倒し指示」=政府筋 | Reuters http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EG2VA20140605

「GPIF運用見直し」=日本株の運用比率引き上げ→株価上昇
という図式。
政府もそれを意図しているのだろうし、市場もそれを期待している。

ただ本当にそれでいいのだろうか?
現在の基本ポートフォリオにおける株式運用比率は12%(±6%)。
実際には17.22%(平成25年12月末現在)。
株価が上昇すれば、その比率は上がって許容限界の18%(12%+6%)に達してしまうため、今後上がれば上がるほど売るしかないのが現状だ。
その運用比率を12%→20%(±6%)まで引き上げれば、今後は売りどころか買いすらも期待できる。
短期的には株価上昇要因となり、一見この国の経済にとっては「いいこと」だと感じられる。

でも本当にそうだろうか?

(このサイトのデータが比較的新しいようなので)
http://www.globalnote.jp/post-3751.html
世界の株式市場の国別時価総額をみてみると日本は3兆681億米ドルで現在3位。全体では53兆1729米ドルであり、日本が占める時価総額比率は6.92%に過ぎない。1位はアメリカでダントツの18兆6683億米ドルだ。

一方で、GPIFが定める基本ポートフォリオは国内株式12%、外国株式12%。要するに現段階においても、株式だけでみれば日本株と外国株が同じ比率を占めているということになる。日本が外国に比べて大きくGDP成長率が高いというならまだしも、低成長を続けるこの国の株式市場の運用比率ばかりを引き上げることが本当に運用成果の向上につながるのかどうか?世界の時価総額分布に従えば、日本株の比率は今ですら高過ぎるともいえないだろうか?確かに日本の年金なのだから日本の経済成長に連動した運用ができればそれでいいという見方もあるかもしれない。でも運用成果を向上させたいのなら、現在の方向性には疑問を感じる。

株式は債券に比べればかなり変動リスクは高い。短期的にGPIFの株式比率引き上げ→日本株買いを期待して市場が上がるとしても、それは投機的な動きであり、GPIFの買いはその利食いに利用される結果になりかねない。

GPIFは国民の年金を預かり運用をしている。
日本がインフレやバブルにならない限り、潜在成長率が高くはないこの国の株式比率を過度に引き上げることが、国民の年金需給に改善をもたらすとは思えない。

日銀による徹底的な金融緩和政策、過剰ともいえる流動性供給、国債の大量買い、株(ETF)買い。
そして国民の年金による株買い。

それらによって短期的な株価上昇が得られたとして、国の経済成長がしっかりと伴わなければその歪みはいつか破綻する。
アベノミクスが本当にこの国のためによかったのかどうかは10年先にならなければ分からないだろうと以前書いたことがある。
未体験ゾーンに突入しているのだから当たり前と言えば当たり前。

日銀や年金にリスク取らせて株買わせることばかりではなく、この国が将来本当に大きく成長していけるのだという未来を示す政治こそが一番必要なのだと思う。

短期的な株価上昇は支持率の維持にもつながるかもしれない。
短期的なインフレによって一見経済がよくなったように見えるかもしれない。
しかし、日銀の資産膨張、年金による株買いは中長期的には大きな潜在リスクとなる。その出口が描けない限りアベノミクスは成功とはいえない。

このところのGPIF見直し論議には正直違和感を感じる。
いかに目先の株を引き上げるかばかりが先行している気がする。
そこにはリスクが必ずある。
それが取るべきリスクなのか?
それが本当に将来の国民のためになるのか?

そして海外投資家依存度ばかりが高まっているこの国の株式市場。
その海外投資家の顔色ばかり伺うような政治。

世界トップレベルの個人金融資産を持つこの国。
その日本の力を信じ、それをもっと活かす政治。
どこかそういったところからはズレてきているような気がするのは自分だけだろうか?
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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