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【ビジネス】株の必勝法?

相場において「必勝法」なんて簡単に一括りにできるものはないと思う。

10年、20年勝ち続けていくにはそれなりに絶え間ない努力や研究、検証があって初めて実現できる。



例えばバリュー投資一つにしたって昔と今では違う。

PER20倍きったら割安と言われていた1990年代。

銀行を中心とした持ち合い構造がその背景にあった。

その持ち合い構造が崩れた今、PER20倍を超えていたら「割高」と言われるだろう。



ロングショートなどでもそうだろう。

昨年までの電機株はひどく下げ過ぎと言われていた。

業績もひどいものだったけど、それでもまだ下げるか?と呆れるほどの弱さ。

日本市場の中だけで電機セクターの割高・割安を判断するのは困難な状況だった。

企業の事業範囲がグローバル化し、競合するライバル企業がサムスンやアップルなど海外企業になっていった以上、割高・割安を考えるときその比較対象は国際的に広げていかなければいけなくなった。



短期運用にしてもそう。

天才的な勝率を誇る短期売買に特化したディーラーが淘汰される様を何人も見てきた。

マーケットを機械が支配するようになり、より高速化する売買環境の中で目視では追い切れなくなり、勝率が下がっていった。



市場は変化する。

90年代の相場ではこんなミリ秒・マイクロ秒の世界は想像も出来なかったし、当時のやり方が今も変わらず通用するというのは甘い気がする。

市場を知る努力を怠らず、市場に何が起きているのか?

どういった要因でこういった動きになっているのか?

市場構造の変化、HFTなどの新たな市場参加者がどういった売買をするのか?

様々なことを知る努力をし、それに自分を変化・適応させていく努力を怠らないこと。

相場の声に耳を傾け、自分を合わせる努力をしなければ長い期間勝ち続けることはできないだろう。



それでも確かにある時期通用するパターンもあるし、相場格言に表されるような普遍的なものもあるかもしれない。



自分は自分なんかよりはるかに凄い運用者を何人も知っているし、グローバルな視点でみた運用という世界において自分がどれほどちっぽけな存在かを知っている。

勝ち続けることの難しさ、それが出来ている人たちの凄さを知っている。



後輩たちや部下たちに自分が学んできたこと経験してきたことを一つの知識として伝える努力はしてきたつもりだけど、それを押しつける気もない。

結局、勝ち方はそれぞれが見つけていくものだから。

結局、自分で見出したものでなければ、きっとそれは将来の変化に対応できるものはならないから。

そしてそのときオレはそばにはいてやれないだろうから。



そんな風に思っている自分なので安易にそういったことを書いてひけらかすようなことは好きになれない。

とはいえ大衆受けするメディアとはそういうものかもしれないとは思う。

経験や知識が少ない人が成長するプロセスを伝えるという意味では面白いかもしれない。

ただ「必勝法」という言葉は安易に使ってほしくはないかな。

勝ち続けることってそんな簡単で安易なものではないから。

【市場雑感】空売り規制緩和について

11月5日から空売り規制が緩和される(空売り=株を借りてきて売る行為)。



これまで空売りを行う際は下値をたたけず、売り指値を並べて出来るのを待つしかなかった。

結果として、売りたい時に売れず、下げ相場になると現物株ディーラーは一気に苦しくなることが多かった。



山一倒産などに揺れた1997年の金融市場。

空売りへの規制導入はその翌年の1998年に遡る。市場は山一の次を探し、都銀の何行かが標的となった(それを払拭するために都銀の合併が進んで今のメガバンク3行体制につながっていく)。そのときに活発に行われたのが「空売り」。

相場の下落や過度な売り仕掛けを防ぐために空売り行為への規制が導入される(1998年旧大蔵省によって直近公表価格未満での売却を禁止、注文時に空売りを明示、確認を義務化)。



そしてITバブル崩壊後の下落局面で、規制はさらに強化された(2002年金融庁により、株価の下落局面では直近公表価格以下での売却を禁止、株価の上昇局面では直近公表価格未満での売却を禁止(現在のアップティック・ルール)、貸株料も有料化、空売り明示義務を信用取引にも適用)。



リーマン・ショック時にも空売り規制は強化される。「ネイキッド・ショート・セリング(株を借りてくるなどの手当てなしに売る行為)」の禁止。



基本的には相場の下落局面で下落を抑制するために導入されるという形で規制は強化されてきた。

といっても上昇局面になったからといって緩和されることはなく、ショート(売り)から入る取引は規制され続けてきた。



結果として下げ相場でリターンを取りづらくなり、運用による収益が不安定化したため、相場低迷期では多くのディーラーが淘汰され、いくつもの証券会社が消えていった(とはいえデリバティブなどを使って対応力を向上させることは出来たはずだし一因に過ぎないが)。



その価格規制がようやく緩和される。

一定の範囲内に限ってだが価格規制が緩和される。

今の現役世代には価格規制がない相場を知らないディーラーも多く、11月5日は少し相場が荒れるかもしれない。



ただこの規制緩和は大きな前進。そもそも市場の価格形成を規制によって歪めるのは決していいことではないと思うから。

売りが規制により抑制されれば、その後の上昇局面はつまらないものになる。売り自体が減ってしまえば「踏み上げ、ショート・スクイーズ(売り方のパニック的な買い戻し)」が入りづらくなる.


さらに急落局面では売り方の買戻しが入るからそれなりに戻りも出てくるし、売り場も作られる。

その売り自体が抑制された状態で崩落が起きれば…。

相場のダイナミズムを維持するためには必要以上の規制は少ない方がいい。



「売りで儲ける」というと一般の人には悪い印象になるかもしれないが、相場は上がりもすれば下がりもする。その中で戦い続け、勝ち続けることを職業にしているものとしては必要な行為でもあり、また正当な売買手法の一つでもある。



「売り」はとても勇気がいる行為だ。何故なら「買い」は最悪その企業が倒産してもゼロにしかならないが、「売り」は青天井。5倍にも10倍にもなるリスクがある。



下のリンクは希代の売り屋として知られたジェシー・リバモア。ウォール街のグレートベア(相場の世界ではベア(熊)は弱気、ブル(牛)は強気)。

彼は4回自己破産し、3度の結婚、そして最後は自殺している。

まぁ売りでばかりやられたわけではないし、その都度復活するのがまたすごいとこなんだけど、それぐらい売りっておっかないってことで^^;



http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G1400/sinyo/faq_11.htm



http://ja.m.wikipedia.org/wiki/ジェシー・リバモア

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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