【ビジネス】大きな意味を持つ一つの通知
昨日、東京証券取引所株式部長名で一通
の通知が出ました。数日前に取引所で開かれた証券会社向けの意見交換会で既に伝えられていたことではありましたが…。
「自己の信用売り等における信用
取引区分の付与について」
いわゆる「中抜き」を禁じてきた
これまでの強制的な一泊二日の制
度が変わります。
の通知が出ました。数日前に取引所で開かれた証券会社向けの意見交換会で既に伝えられていたことではありましたが…。
「自己の信用売り等における信用
取引区分の付与について」
いわゆる「中抜き」を禁じてきた
これまでの強制的な一泊二日の制
度が変わります。
今年に入って個人投資家の信用取引の仕組みが大きく変わりました。反対売買を行えば即時決済となり、証拠金の再利用が出来るというもの。事実上の差金決済です。
一方で証券自己は…
買いからについては従来通り差金決済が出来るものの、売りについては認められませんでした。
例えば、1万株の売りを行いその買い戻しを行う。それを10回繰り返すと10万株の売りと買いを翌日まで持ち越して決済しなければならなかったのです。
本来、一度株を借りてきて売っても、その後に買い戻しを入れれば借りた株は手元に戻ってくる。
もう一回売る時にわざわざ別にもう1万株借りてこなければいけないというのは…?
もう一回売る時にわざわざ別にもう1万株借りてこなければいけないというのは…?
この仕組みは「中抜き」が事実上禁止されたことから始まっています。
何故禁止されていったのか?
失われた十年、そしてITバブル崩壊と市場が低迷し、株価下落が問題となった時に売りを抑制することを目的に導入された空売り規制が背景にあります。特に「アップティックルール」と呼ばれる規制。
『株を借りて売る=信用売り』
は合理的かつ合法的な売買行為なのですが、このときに導入されたアップティックルールという規制(株を借りて売るときは下の値段を叩いちゃダメ)はその行為を行う際に下の値段を売っちゃダメという制約を与えるものでした。
これにより証券自己は相場が下がると思い、売りで勝負しようと思っても買い注文にぶつけることが出来なくなり、売りを指して出来るのをただひたすらに祈るしか出来なくなりました。個人投資家は一定の範囲で許されていたので導入当初は大口の個人にディーラーが食い物にされるパターンすらありました。
そこで一部の証券が利用したのが「中抜き」でした。
そこで一部の証券が利用したのが「中抜き」でした。
最初に売りを行い、次の買いをその買い戻しではなく、別に新規の買いとして建てる(いわゆる売り買いが同時に建つ両建て)。
次の売りは後から建てた買いを売ることにしてアップティックルールの回避を図ったのです(もともと保有していた買いを売ることは規制されていない)。これを繰り返すことで最後の買いだけを買い戻しとすれば信用取引として一晩保有しなければならないのは最初と最後の一万株のみで済み、さらにその過程ではアップティックルールも回避出来る。
当然ながら、これは脱法行為であると認定され、パプリックコメントなどでポジション中立状態からの売りは全て空売りと同義とみなすと規定されました。そして全ての売りに対して空売り明示義務が課せられて今に至ります。
中抜き行為自体は違法ではない。
ただ規制回避を目的として悪用するのはよろしくない。
というところですね。
しかし、その空売り規制が緩和され、アップティックルールも制限はあるものの解除されようとしています(11月)。
そんな中で中抜き禁止だけが残っていくのはおかしい。
それを訴え続け、耳を傾けて動いてくださった方々がいます。証券のマネジメントサイドの皆さんが嘆願書を提出してくださったりもしたようです。
証券自己の取引環境は今や個人より厳しい。売りをほとんどやらせてもらえない証券会社も少なくない。やらせてももらえても制限がきつい。結果、下げ相場では現物株ディーラーは対応しきれずに苦しんできた。
その大きな要因の一つが解決されます。
信用取引における中小証券にとっ
て非常に大きな負担となっていた
この仕組みが変わることは、経営
の面からは資金繰り負担を大幅に
軽減する意味をもち(会社によっては数十億規模)、先に書いたようにディーラー
にとっては下げ相場での対応力ア
ップにつながります。
個人投資家の信用取引の事実上の
差金決済が認められた中で、ディ
ーラーだけが受けていた不利を大
きく改善してくれるものです。これを聞いた一人のディーラーの言葉「これで個人と同じ土俵で戦える」。
事あるごとにお願いしてきた課題
の一つ。地場証券ディーラーが待ち望
んでいた規制緩和です。理解を示
して変えてくださった取引所の方
々に感謝です。