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【ビジネス】新しい市場商品の活性化について~日本取引所に願うこと

新しい市場商品の活性化について




昨日のGMS(Global Market Solution)2012のパネル・ディスカッションに参加して話したことの一つについて自分なりの意見を。




1990年代以降、東証も大証も新しい先物商品をいくつも生み出してきた。


日経300先物

ミニ日経平均先物

ミニTOPIX先物

ラッセル野村プライムインデックス

業種別指数先物(東証電気機器株価指数、東証輸送用機器株価指数、東証銀行業株価指数)

NYダウ先物

日経平均VI先物

配当指数先物

REIT指数先物




しかし、成功したといえるのはミニ日経平均先物のみ。

それ以外は出来高も少なく、板も薄い状態が続いている。


そうなってしまったのはいくつかの要因があるだろう。




①証券会社の問題

・ディーラーの契約化が進み、雇用・報酬が全て実績に基づくものになっていったため、収益性が不透明なものにあえてリスクを取りにいってまで流動性を供給しようというディーラーが激減した。

・90年代中頃までのディーラーは流動性の供給であったり、マーケットメイクに対する意識を持っていた(ように思う)。しかし、利益供与や損失補填の問題からディーラーの職務が顧客と完全に切り離されるようになり、結果としてその存在意義は収益のみによるものとなっていったため、同じく収益性の見えないものにリスクを取らせようとする動きがなくなっていった。




②システム会社の問題

・勘定系システムの会社では、新しい先物商品が上場される度にその対応費用として数百万~一千万円超のコストを要求するようなシステム会社が多く(VI先物とダウ先物についてはかからなかったようですが)、フロントのシステム対応も含めて(こちらは元々安価だったが、最近では取らないところも多い)新しい先物商品を売買できるようにするためだけでもかなりのコストがかかった。

・地場証券の多くは「新しい先物を売買するであろう顧客」を持っておらず、先物専門のディーラーの数も現物株のそれに比べればかなり少ない。その少数のディーラーのために多額のコストはかけられない。

・対応に非常に時間がかかり、その商品のスタートに間に合わないことも少なくない。




③取引所の問題

・商品設計などは素晴らしいものも多く、魅力的な商品もあるが、市場参加者が抱える問題点をあまり意識してこなかった(最近ではその問題意識は共有できており、なんとか改善しようとアクションを取ってくれる方も増えた)。

・市場参加者がその商品にアクセスできるように環境整備を行うために取引所としてもう少しできることがあるように思える。

・システム刷新の際もそうだが、それによってどれぐらいのコスト・期間がかかり、会員証券会社にどれだけの負担がかかるかを十分にリサーチできていない。またその負担軽減策が十分ではない。

・取引所がマーケットメーカー制度を導入し、外資系などの多くにそれを要請してきているが、その商品で積極的にマーケットリスクを取るリスクテイカーをどう増やしていくかが足りていないように思える。ASK・BIDを並べて、システムでそれを上げ下げしているだけの状態では建て玉は十分に増えていかない。




④市場参加者の問題

・ファンドや機関投資家のポートフォリオのパッシブ化が進む中で、それぞれの商品特性を活かしたヘッジニーズなどは後退し、その多くがTOPIXなど従来の指数先物で足りる状態になっている。




まぁ、それ以外にも色々と出てくるかもしれませんが、ざっと思いつくのはこんなところでしょうか(^^ゞ

これまででも現場レベルでは何とかしようとアクションを取ってくださる方、耳を傾けてくださる方はいらっしゃいましたが、日本取引所(仮)になるにあたって…




市場の活性化のために取引所がするべきことは何なのか?

多様な市場参加者を育成するために何ができるのか?




ぜひ考え、議論していって強いリーダーシップを発揮していただきたいと願います。

【ビジネス】頑張れ!

先日、全く違う業界に再就職したとの報告が後輩からあった。

本当に律義なヤツだし、信頼できるヤツ。

なんとかしてやりたかったけど、今の業界環境ではどうにもしてやれなかった。




そんな友人や後輩がいっぱいいる。

市場環境の変化に適応できず、収益低迷が長引き、結果として証券会社を転々とし、最後はいく先がなくなってしまう。

厳しい言い方になるが、結果が出せなかったり、損失を出してしまってきているにも関わらず、自分の運用を反省し、変えていく努力も十分に出来ないまま、ただ次の会社に移ろうとするディーラーも少なくない。

ディーラーとしての努力が足りなかった…といえばそうなのかもしれない。

そういった環境でも稼げているヤツもいるのだから。




このディーラーという仕事はある意味ギャンブルに近いものがある。

運用という仕事自体をギャンブルとは思わない。

そうでなければ20年間勝ち続けるなんてことが出来るわけないのだから。

ただうまくいかなくなっても『次こそは…』という思いをぬぐえなくなり、踏ん切りをつけることが出来なくなる点はやはりギャンブルに似ている気がする。




成功すればそれなりの年収になる。

かつては中小地場証券でも数千万~数億円まで稼いだプレーヤーもいる。

なんとかディーラーを続けて、どこかでいい相場が来てくれれば…そんな未練も残るだろう。




でも時代は変わった。

市場環境の変化が人間に短期売買の収益機会を大きく減少させ淘汰していく。

その変化に適応できない限り、ディーラーも中小証券も生き残ることは出来ないだろう。


2007年以降は上昇相場でも『日計り』での数字が伸び悩むことが多くなってきているはずだ。

日中のボラティリティの低下(海外投資家への依存度の高まりと海外要因で動くことが多くなっていること、国内リスクテイカーの減少…etc)から収益機会は減り、さらにアルゴやHFTなどにその隙間を瞬時に奪われていくようになったからだ。




市場の構造変化。

だとするならばそれに適応する努力が出来ない限り、かつての『古き良き時代』のような成功はないだろう。




苦しかったと思う。

すごく悔しかったと思う。

全く違う世界にいい年になってから再チャレンジすることは大変だと思う。

でもその決断を誇っていい。

家族、生活を守るためにしたその決断を褒めてやりたい。




人生は選択の連続だ。

その選択を後悔しないために今を懸命に努力していくしかない。

結果は後になってしか分からないのだから。




頑張れ!

【市場雑感】HFTは本当に市場の流動性を増加させたか?

東証一部売買代金が低迷しています。

一兆円すら割り込む状態が目立つようになってきました。


HFTが入っている状態でこの売買代金というのはかなりひどい印象です。

値幅も小さくなり、市場は活力を失っている状況。




しがないディーラーのブログ



添付のグラフは1990年からの売買代金推移と日中の値幅を示したもの。

1990年代の売買代金は2000億円とか3000億円とかいう時期もあり、非常に少なく感じられます。

が、この時代は手動での売買が主であり、顧客も電話で注文のやり取りをするようなアナログな時代でした。

値動きは活発で少なくても200円~300円程度は動いていました。




売買代金が急速に増え始めるのは1999年頃から。

ITバブルという相場の盛り上がりに加え、IT革命により売買インフラが様変わりし、ディーラー・トレーダーのみならず、顧客までもがオンラインで容易に売買が出来る時代になりました。

売買代金の底上げという意味ではインフラの変化が大きく寄与しています。


そして株ブームと呼ばれた2005年後半~2006年。

ネット証券の台頭により、デイ・トレーダー(専業ディーラーなどとも)と呼ばれる個人投資家が急激に増加し、証券ディーラーの数も増加しました。

その運用の中心は日計りを主とした短期運用。

一日の間に売買を繰り返す短期市場参加者の急増により売買代金は急激に増加。

売買代金は一時3兆円を超えることすらありました。




一方で、1990年代に比べて起きた変化の一つのして『ボラティリティ(変動)の低下』があります。

その要因としてはいくつか挙げられますが、

一つは機関投資家の運用がアクティブ運用からパッシブ運用へと変化していったこと。

バブル崩壊で大きな損失を被り、リスクを嫌った投資家・運用者は自身の相場見通しなどでリスクを傾けるアクティブ運用から指数連動型のパッシブ運用へとそのポートフォリオを変化させていきました。

そして銀行なども1990年代後半に起きた拓銀や山一証券の破たんといった問題から株式運用でのリスクを抑制し、自己資本規制などもあって市場リスクに対して非常に保守的になっていきました。

そういった意味では国内市場で大きくポジションを傾けるリスク・テイカーが少なくなっていったといえます。




もう一つの大きな要因は市場参加者の運用スパンの短期化です。

ディーラーやデイ・トレーダーなど日計りを主とした参加者の増加が、結果として市場のトレンドを抑制することになりました。買ったらすぐに売ることを考えるような参加者ばかりであれば当然っちゃあ当然ですが…(^^ゞ




国内市場参加者の中で、機関投資家の保守的な運用へのシフトと極端な短期運用への偏りが売買代金はそれなりにあるものの、値幅やトレンドが出づらいという状況につながっていったのです。




一方で、主役は外国人投資家になっていきました。

外国人投資家の売買シェアはすでに6割を超えてきています(日本人でも海外から売買をすると外国人扱いになるので全てが青い目の外人ではありませんが)。

しかし、彼らにとっては日本市場は主たる市場ではなく、母国市場やグローバル運用をやるうえでのポートフォリオの一部に過ぎません。特に時間帯という面でも彼らが積極的に場中にアクションを取ることは少ない。

結果として海外市場が上がれば外人買いで日本市場も上昇するものの、日本時間帯で独自の動きが出ることは少なくなりました。




そしてその傾向をさらに悪化させたのがアローヘッドの稼働です。

取引所システムの執行速度が急速に速くなり、それを利用してHFT(超高速売買)を行う市場参加者のシェアが急激に増加しました。


しかし、売買代金は大して増加していません。

そして市場のボラティリティはより低下傾向にあります(震災の時を除いて)。




HFTが悪だとは思いません。

市場環境の変化、テクノロジーの進化を利用して収益を上げることは合理的な話だと思います。

しかし、過当な数量の発注・キャンセルを頻発させており、結果として市場の価格や板情報への信頼低下を招き、多くの市場参加者がこの市場から去っていきました。


日経平均株価の水準も気にしないような無機的な売買を繰り返す市場参加者ばかりで市場が活力を取り戻すとは到底思えません。

多様な市場参加者がいて、リスクテイカーがいて始めて市場は動き、出来高も健全に増加していく。




欧米ではHFTへの規制が強化されつつあります。

日本はその監視・規制が非常に脆弱です。

MiFIDⅡによる規制強化もあり、今後彼らは規制の甘い日本市場により注力するでしょう。




アローヘッドの稼働は2010年4月です。

HFTの市場参加率の増加によって流動性が増えたかどうか…今一度よくその功罪を考えるべきときなのではないでしょうか?

【ビジネス】あのとき…

‎2006年4月22日に提出したディーリング部改革案。


久し振りに引っ張り出して読み返してみた。

色んな思いがよぎる…。




当時の認識はまだ甘くて、自分はアルゴ・HFTの影響がここまで強くなると思っていなかった。

それでもこの案について真剣に当時から取り組めていればだいぶ違う形になった気がする。


2006年4月といえばまだ収益的にはなんとかなっていた時期。それでも市場には変化の兆しが出始めていた。

しかし、2005年後半からの上昇相場で上がった収益もあり、マネジメントには危機感が薄かった。

当時、契約だった自分の立場では提案以上のことが出来ず、結果的に何も出来ないままその会社を去ってしまった。


非常に強いディーリング部だった。年間数十億円の収益も上げていたこともある。

正しい道筋を切り拓ければ今でも業界のリーダーシップをとれていたかもしれない。

しかし、いまや存続が危ぶまれる状況にある。




同じ失敗を繰り返したくない。

時間も無駄にしたくない。


無駄にしてしまった数年間の間に自分なりにチャレンジもし、知識や経験、コネクションも得てきた。

当時の自分が出来なかったことも今なら出来ることがあるはず。




改革には痛みも伴う。

反発もあるだろう。

でも実現したその先に未来が切り拓ける。

あのとき出来ずに終わったこと、ここなら出来ると信じたい。

【告知】今後のブログについて

さて朝方のトレードも一巡し、相場が恒例のこう着に陥ったところで…。

 

今朝、相場が始まる前に新聞を読んでいた後輩が
『アッ!』
と声をあげました。
『どーした?また増資か?』
と聞いたら
『○○さんのブログが新聞に出てます。』
とのこと。
とりあえずその記事を読ませてもらいました。

 

 

内容はほぼ転載で、記者さんの悪意はなく、どちらかといえば『頑張れ!証券ディーラー。』の一言で締めくくってくれているあたり、自分の主旨を理解してくれている方なのだと思います。
ただやはり有料で販売しているメディアの記者の方が無断でこういった転載を行うことはよくないと思うのです。

 

 

先日もある友人(株の世界では有名な方)が
『自分の番組で○○さんが書いた記事を取り上げたいんだけどいいですか?』
と聞いてくれました。
答えはもちろん
『OKですよ(^^)』
そのやり取りひとつが大事なんです。

 

 

中にはネガティブなコメントもあります。
厳しいことも書いていますし、その批判の対象になっている方にとっては気持ちのいいものではないはずです。
当然、それを見て不快に思われる方もいらっしゃるでしょう。
特に先日のひと悶着などは自分自身も反省するぐらい頭に来てつい書いてしまったこともいくつかあります。

 

 

このブログはブロガーとして有名になるために書いているものではありません。
アフリエイトなどで儲ける意図もありません。
最初は友人限定記事のみにしていたぐらいですから。

 

 

元部下との一件があって、後輩たちに伝えたいこと、業界が危機的な状況に向かいつつある中で少しでも声を上げて伝えていきたいことをただ個人として書き綴っているものです。

 

 

ブログを通じてお会いした人、後輩たちもいます。
そのブログをみて
『励まされた。』
『刺激になった。』
『勉強になった。』
と言ってくれた後輩たちもいます。
もちろん快く思っていない人がいることも分かっています。

 

 

厳しいことも書きますが、それは自分が利益を得るためではありません。
誰かを追い落とすためでもありません。
そういった見方があることを知ってほしい。
そして今一度自問自答してほしい。

 

 

市場環境の激変の中で淘汰されていく地場証券。
自分はそこで育ち、多くのものを与えていただきました。
そして夢も見てきたし、この市場が大好きです。

 

そして日本という国に生まれ、育ち、そこに愛着も持っています。
自分たちだけではなく、その子供たち、次の世代までこの国を好きでいられるように。
この国で生きることが幸せであるようであって欲しいと思います。

 

自分はマーケットの世界で生きてきました。
非常に狭い世界ですが、まずは自分が知る世界であるそこから始めて、少しでも出来ることをしていきたい。
仕事であれ、NPOの活動であれ、個人としての時間であれ、そういった『思い』を持って日々の時間を過ごしています。

 

 

個人金融大国である日本にとっては金融資産は資源です。
これを活かすことができない日本。
多くの変革や覚悟、批判を乗り越える勇気も必要になると思いますが、大きな視点に立って新しい時代を作らなければ日本はジリ貧になる一方です。
少しでもこの国の市場が元気になり、企業が力を取り戻し、若手たちがこの国の未来に夢見れるようになって欲しい。
そんな『思い』でいます。

 

 

今回、記者さんの悪意は全くないと思います。
ただ知らない人が知らないうちに見ている状態はあまり気持ちのいいものではないですし、アメブロについては知らない方も多くアメンバー承認してしまっているので、閉鎖も含めて検討します。

 

ただ後輩から言われたので閉鎖は様子をみることとし、しばらくはアメンバー限定記事にするようにします。
今後、友人・知人の方はmixiもしくはFacebookにて本人を明らかにしたうえで申請いただければ承認はいたします。

ご理解いただければと思います。

【お断り】無断掲載について

このブログは業界のためにと個人として思うこと、訴えたいことを書いていますが、その掲載・引用についてはせめて一言お断りください。


今後は限定記事とさせていただきますが、状況をみて閉鎖も検討します(こちらは知らない方も多数アメンバーになっているので)。

友人・知人の方はmixiもしくはFacebookにて本人であることを明らかにしたうえで友人申請いただければ承認いたします。

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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