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【ビジネス】AIJの件

昨日ニュースを見ていてAIJの件で資金を預けていた年金側の運用担当者が「我々はプロではないからパンフレットしか情報を得ることが出来ない」とまるで単なる被害者としてのコメントをしていた。



AIJはあまりにも悪質だし、金融ビジネスの信頼を失墜させるような最悪なことをしでかしてくれたが、数十億、数百億に上る従業員たちの年金を預かる運用担当者が自分は素人だから被害者だなどと言うのはちゃんちゃらおかしい。



個人投資家じゃないんだよ。分類上はプロじゃないの?少なくとも大勢の人のお金預かる人間がそれ言っちゃダメでしょ。



確かに現実的には多くの担当者がサラリーマンであり、そういった専門家を外部から採用しているところは少ないかもしれない。でもそれならそれで学ばないと。それにファンドオブファンズといったプロに委託する道だってあるのだから。



自分がファンド運用に携わっていたとき、年金運用のプロの方からホワイトリストについて教えていただいたことがある。アドミニストレーターやトラスティなど運用管理、資産管理を行う会社がしっかりしているかどうか?そのリスト以外の会社に委託している場合は投資出来ないと。



自分のところはベンチャー的なファンドであり、資産も限られていたからコストの高いところに委託することは出来なかった。担当者の方は頑張ってくれたけど、結局その段階では投資対象にはなりえなかった。



またある投資家からは訴訟などを抱えていると投資してもらえなくなると強く言われた(それが犯罪などの刑事ではなく離婚などの民事でも)。



それぐらい運用者や運用会社へのデューデリジェンスは厳しいと。



数年前から怪しいと気づいたところはいくつもあったと聞く。当初プライム・ブローカーをやっていた某欧州系証券も手を引いていて、他の外資系証券も距離をとっていたようだ。



自分はファンドの世界を垣間見たに過ぎない。なんでこんな巨額な損失が隠せるのか理解出来ないし、そんな怪しげなストラクチャーのところにプロであるべき年金運用者が投資しているのか理解に苦しむ。



まぁどう騙してきたのか詳細が分からないからそれ以上は何ともなんだけど。



しかし、人を騙した金で会社経営してそれなりのオフィスに給料もらってたと考えると、同じ人の金を預かる立場のものとして本当に許せんな…。



金融庁の人達が金融ビジネス活性化のために新しい運用業の法案を取りまとめ、ようやく実現しようというときに本当に残念な事件です。

【ビジネス】AIJの記事を読んで

今日の日経朝刊のAIJの記事は二つの意味で残念。




知り合いの方がいたら申し訳ないんだけど、他人のお金を預かる会社(人)として絶対にやってはいけないことだと思う。

自分のレコードを偽る。損失を隠したりごまかしたりする。

これは履歴書詐称以上に悪質な行為。




そうやって投資家や会社の信頼を裏切るような会社(人)がいるから規制が厳しくなりコストが上がる。そして投資家は若い運用者やこれから育とうとする会社に投資をしてくれなくなる。


自らが直接投資家に与えた損失以上に業界に与えるダメージは深刻。

特に国内運用ビジネスが今後非常に厳しくなることが予想されている中で起きてしまったことは本当に残念。


せっかく金融庁が運用業界活性化のために新しい運用業の法案を作ってくれたりしているのに…。


悪質な行為をする一部の運用者や運用会社のために業界全体の規制が上がり、結果として衰退していく。

世界有数の個人金融資産を誇るこの国で運用ビジネスが低迷し、衰退していくのは本当に残念。




こういった問題を乗り越え、高いモラルを持った若い運用者たちが育ち、業界を活性化させていける道筋をしっかりと作っていきたいと願う。






そしてもう一点


『株価指数のオプション売りなどで、相場変動に左右されずに安定して高い収益を目指す』


巨額損失が出た経緯は分からないけど、これを見る限りリーマン・ショックか震災のときに損失が出た可能性は高い。

これでまた『オプションの売り=危ない』になっちゃうとしたら残念。

取扱説明書をしっかり読んで用法・用量を守ればこんな有意義な商品はない。

それをロクに読まずに安易な運用をやる人は少なくない。




権利行使価格の遠いオプションを大量に売る行為。

オプションの本質的な怖さを知らない人がよくやる投資手法。

一見、権利行使価格が遠いから安全なように見える。

10回に9回以上は勝てるはず。




そしてオプション・プレミアム(価格)が安いから大量に売る(いくら稼ぐために何枚売るとかいう発想が一番危険)。

結果、ガンマ・リスクは跳ね上がり、価格が近づいてきたときにヘッジやポジション・コントロールのしようがなくなる。

そして巨額損失は生まれる。


そして10回に1回の損失で全てを失い、ヘタをすればとてつもない損失を生み出し、会社をつぶしたり、個人としてとてつもない負債を抱え込む。

自分が運用者としてやってきた中でもいくつもあった。




ベアリングスのニック・リーソン…先物のポジションばかり注目されるけど、目先の資金手当ての為にオプションの売りを大量に行い、そのポジションを守るために先物で買い支えようとした。結果、イギリスの名門銀行ベアリングスは破綻に追い込まれた。




勧角証券(現みずほインベスターズ証券)…第一勧銀から増資を仰ぎ経営支援をしてもらうところまで追い込まれた。ディーリング部は一時解散。90年代中頃は全ての権利行使価格で同社は筆頭の売り方になっていた。




タイコム証券(の顧客)…2006年の上昇相場でコール・オプションの大量売り建玉が大きな損失につながった。コールで巨額損失出した珍しい例。大証の証拠金ルールの改正などにつながった。




某個人投資家…親の生命保険を元手に相場を張り、オプションの売りで1億円ぐらいまで資産を増やしたはいいが、東日本大震災で10億ほどすっ飛ばしたらしい。こういった投資家がかなりいたため、ネット証券の多くが損金回収できずにかなりの額の特別損失を計上するはめになった。




ニアの(権利行使価格の近い)、プレミアムの高いオプションを売る方がポジション・コントロールははるかにしやすい。

タイム・ディケイ(時間的価値の減少)を取りにいくのなら、ただ売るだけではダメ。

オプションの特性やその本質を理解していないとこういったことが起こる。

でもオプションほどストラテジーを適切に反映できる商品はない。




このことが『オプションの売り=危険』につながらないことを願います。

【相場雑感】逆境の乗り越え方

ディーラーという仕事をしていると、何度も苦しい局面に追い込まれることがある。




『もうダメなんじゃないか…。』




夜も眠れなくなり、一人で部屋にいてもジッとしていられず、怒鳴ってみたり、壁を力任せに叩いてみたり…。


負けたことが悔しくて…

損失の額におびえて…

自分自身にいら立って…

もう取り返せないのではないかという不安にさいなまれて…




そういった逆境に陥ることは何度もあるだろう。

でもそれは成長へのチャンスにもなる。

ただ問題はその逆境とどう向き合い乗り越えていくか。




自分自身のディーラー人生の中で一番苦しかったのは月間で3千数百万の損失を出したとき。

多分、一生忘れることは出来ない…イラクのフセイン大統領が捕縛されたときの出来事だ(2003年12月)。




その月は出だしから調子が悪かった。

焦りが自分の中にあり、コントロール(3つの『C』のうちの一つ)を失っていた。

何をやってもうまくいかない。

タイミングもかみ合わないし、ちょっと取り返してもつまらないところで大きくロスを出す。

そして苛立っているところにシステムトラブルで思わぬ損が出た(板の配信情報が遅延し、9分ほど前の板情報で売買していたため▲800万以上のロスが出た)。

月半ばで▲1800万円ぐらいまで損が拡大し、取り返そうという焦りが自分を支配していた。

その頃の月間損失限度額は▲4000万円。

まだ余裕は残されているはずだった…。




そのときに流れた『サダム・フセイン捕縛』のニュース。

自分にとっては『取り返すチャンス』。

月曜日はスタートから全力で勝負にいった。


当時は先物だけではなく、現物株もかなりやっていた。

目いっぱいフルショットで勝負にいった。

当時、短期運用者の多くがやっていた銀行株を片っ端から買ってフル・ロング(全力で買い)。

先物もロング(買い)で攻めた。


先物で実現益+400万ぐらいを確保し、現物株の買いポジションは+800万円ぐらいの評価益を確保していた。


『プラ転(損を取り返してプラスになること)まであと少し…。』

『今晩の米国株式市場もフセイン捕縛を好感して大幅に上昇するだろう。』


自分は現物株の買いポジションを全てオーバー・ナイト(翌日に持ち越す)にした。


米国市場は大幅上昇でのスタート。

寄りついてみるみるうちに100ドル以上の上昇をみせたNYダウ。

自分は安心して眠りについた。


しかし、翌朝…

NYダウは下落に転じていた。

前日の日経平均株価は300円以上の上昇。

それもフセイン捕縛のニュースでNYダウが大幅上昇することを見込んでの上昇だった。


その期待は裏切られた。


翌朝、死刑台にでも上るような気持ちで会社に行きポジションを投げる(損切る)ところから一日が始まった。

全てのポジションを閉じたとき、その損失は3395万8千円にまで膨れ上がっていた。

つまり前日の状態から一晩で▲2800万円も悪化したことになる。


目の前が真っ暗になった。


それまでの自己ワーストの損失は▲1881万8千円。

それを大幅に上回る損失を出してしまった。

ボタンを押す指が震えて、自分がしたことに怯えた。

苦しくて、怖くて…。




でもそのときの上司・会社は自分を責めはしなかった。


『十分これまで頑張ってくれているんだから焦らないでいい。』


と言ってくれた。


それが大きな救いになった。




月間損失限度額まではあと600万円ほど残されている。

損を取り返したかった。

早くこの苦しさから逃れたかった。


でも自分は上司のところへ行きこう言った。




『今回の自分のトレードを振り返って、本来の自分ならしないようなリスクの取り方をしていました。損を取り返したいという焦りから自分を見失っていたと思います。月間損失のままで申し訳ありませんが、自分自身を見つめ直すために時間をいただけないでしょうか?』




そしてその月の取引を全面的にストップした。


毎日会社に行き、シミュレーション(仮想取引)を繰り返した。

自分の何が悪かったのか、自分のどこに隙があったのか、自問自答を繰り返した。


その月はほとんど眠れなかった。

ベッドに入っても何度も目を覚ます。

不安や悔しさで押し潰されそうだった。




でも相場が悪いわけではない。

損を出したのは全て自分に原因がある。

間違えたのは自分なのだから。

そこを修正出来るまで苦しみもがくしかない。


損を取り返して楽になりたい気持ちは山々だった。

でもそれはあくまで自分の都合に過ぎない。

戦場で間違いを犯し、追い込まれるような損失を出した。

その原因は自分にある。

それを見つけ、修正出来るまでは勝負するべきではない。

少なくとも『損を取り返したい(=楽になりたい)から』という気持ちで過剰なリスクは取ってはいけない。

自分にそう言い聞かせ続けた。




* * * * *




伏線は前々月までにあった。

10月までそれなりに調子がよかった自分。

チーム最年少ながらトップを争う位置にいて、ITバブル以来の月間過去最高益更新すら視野に入りつつあった。

そしてずっと越えたいと思っていた月間1億円の大台に乗せたいという意気込みで攻め続けていた。


しかし、それが慢心を招いた。

トレーディングが雑になり、大振りになり、コントロールを失っていった。

それが11月。

その月の売買益はわずか+138万1千円。

当時の自分からすれば儲かっていないも同然だった。

そして焦りが生まれた。

その焦りを抱えたまま12月に入り、トレードはどんどんおかしくなっていった。




その焦りが先に書いたような失敗につながり、取り返したいという焦りから過剰なリスクを取った。

特に夜間取引の出来ない運用環境の中で大きなオーバーナイト・リスクを抱え込んだ。

これはただ『プラスに浮上したい。』という自分自身の焦りからとった行動だった。

いいときの自分なら多少は残しても半分は利益を確定し、損益のコントロールを意識していただろう。

少なくともその時点でもまだ月間マイナスだったのだから…(大きくプラスが残せている状況ならそういうリスクテイクもアリだと思うが)。




* * * * *




失敗の原因は全て自分の中にある。

相場が悪い、相場のせい…では絶対にない。

フセインが捕まったのに上昇しなかったNYダウがおかしい…のではない。

それを期待して+300円以上も上昇していることを冷静に考え、ある程度の利益確定をしていかなかった自分に隙があった。




そのあと損を取り返したいという焦りと向き合い、苦しい時間が流れた。

1月に入ってコツコツ取り返そうとしたが、当時所属していた会社が処分を受けたため2週間の売買停止。

損を抱えたまま何も出来ないことに苛立ちは増すばかりだった。

その翌月もその焦りや苛立ちをコントロールしきれないまま一ヶ月が過ぎた。

本当に苦しい3か月だった。

ようやく自分自身のコントロールを取り戻せたのは期末の3月だった。

損を全部取戻し、プラスを出すことができた。

これがその前後のトラック・レコードだ。




Jan-03 +27,713,000

Feb-03 +7,813,000

Mar-03 +1,509,000

Apr-03 +15,384,900

May-03 +15,230,500

Jun-03 +67,550,000

Jul-03 +77,528,000

Aug-03 +37,513,000

Sep-03 +50,232,000

Oct-03 +50,348,000

Nov-03 +1,381,000

Dec-03 -33,958,000

2003年年間収益 +318,244,400

Jan-04 +7,269,000

Feb-04 -2,671,000

Mar-04 +43,295,000




長く苦しい時間だったけど、自分の中の焦りや苛立ち、苦しさと向き合い続けた3ヶ月は無駄にはならなかった。

確実にその3ヶ月で自分の強さは増したと思う。




その3ヶ月があったから、その後月間▲6000万円以上の損失を出したときもコントロールを失わずに翌月に取り返せた。

当時の後輩たちからは


『〇〇さん、そんだけ損出してなんで冷静でいられるんですか?』


と何度も言われた覚えがある。

冷静ではなかったんだけどね…でも乗り越えるために、自分のコントロールを取り戻すために必要なことが分かっていたから。




もし丁半博打で大勝負に出て一気に取り返せていたとしても、きっとそんな強さは身につかなかっただろう。

恐らくその後も苦しくなるたびに無茶をして、きっとどこかで取り返しようのない損失を出していたはずだ。




ディーラーなんてそんな簡単に強くなれるもんじゃない。

余程な天才でもない限り、一朝一夕にデカくなれるもんじゃない。

自分の弱さと向き合いながら、逃げずに、でも焦らずに一つ一つ乗り越えてようやく強くなっていくものなのだから。




自分はこれまで所属してきた会社で売買損益だけみれば損を出して終わったことはない。

十分なリスクを取れる環境がなく、期待ほど利益を残せなかったり、部や会社の運営経費をカバーしきれなかったことは2つほどあるが…。




売買損を出して会社を辞めるということ。

もし自分をプロの運用者だと思うのなら、そのことの意味を今一度しっかりと見つめ直してほしい。


人の金で丁半博打を打つような戦い方をしてはいけない。


特にその理由が自らの焦りであるならば、『(メンタル)コントロール』を失っている。

大きな勝負をするにはそれだけの裏付けを持ってしなければいけない。

利益が乗っているときと損失が出ているときの戦い方は違って当たり前。

それが『(P&L)コントロール』。




苦しさから逃げちゃいけない。

でも苦しくなったのは自分に原因がある。

それを謙虚に受け止め、正面から乗り越えてはじめてそれは力になる。




他人のお金で取っていいリスクとそうでないリスクがある。

大きな勝負をしている人たちはそれなりに会社に利益貢献してきた実績や裏付けがあるはずだ。

会社に損を与えている状況下ではやっていけないことがある。

それをして本人がクビになるのは構わない。

でもその損失は会社に残り、結果として残されたディーラーたちへの負担になっていく。




以前、ある解説者の方から




『ディーラーはレベルが低い。』




と言われたことがある。




デイ・トレーダーの知人からも




『ディーラーって人の金だからやれてるだけですよね?自分の金で勝負しているオレらの方がよっぽどプロなんじゃないっすか?』




と言われたことがある。


すごく残念だったし、悔しかった。

自分はこの仕事が好きだし、感謝しているし、誇りも持っている。

他人様のお金を預かり、リスクを取り、リターンを上げていく…その責任の重さをしっかりと受け止めながら、その責任を果たしてきたつもりだったから。


プロの運用者として胸を張れるディーラーであるためにどうあるべきなのか、それを今一度考えてみて欲しいと思う。




長々と書いてしまったけど、昨日の部下の件で色々と思うところがあったので…。

【相場雑感】度胸?勇気?

相場の世界で勝ち続けるって簡単なことではない。

相場は自然と同じで、晴れの日もあれば雨の日もある。

嵐のときだってある。



よく『相場は度胸』と簡単に言うヤツがいるけど、勝負の世界で勝

ち続けるために必要なのは『度胸』だけではない。

...

自分は『度胸』というよりは『勇気』だと思っている。



相場と向き合う『勇気』

リスクと向き合う『勇気』

損失にくじけない『勇気』

そして自分の弱さから逃げない『勇気』



でもその『勇気』は怖さを知ることから始まる。

怖いからこそ努力し、勉強し、相場を知ろうとする。



相場のことをロクに学びもせず、怖さに目をつぶってただリスクを

振り回すヤツは勝ち続けることなんて出来ない。

誰でも勝って当たり前のような相場で稼げるときもあるかもしれな

いけど、10年見てみたら大体そういうヤツは損を出して終わって

いる場合がほとんどだ。



大きな勝負をする以上、それだけの知識・分析・努力がなければな

らない。

そしてそれに対する自信が持てるから戦える。

そしてその自信は過信であってはいけないし、(損を取り返したい

とか)自分の都合であってはいけない。

プロの運用者である以上、そのリスクは他人様のお金で取っている



そのお金を自分の都合で振り回しちゃいけない。



他人様のお金だからこそ、高いプロ意識を持ち、高いモラルを持ち

、責任感を持つ。

そのプレッシャーを正面から受け止めたうえで、努力し続けて得ら

れるものが相場で戦い抜く『勇気』だ。

怖さを知るからこそ得られる強さなんだと思う。



そこを単なる度胸とはき違えて、自分が出した損を取り返すために

無茶なリスクを取る。

それでは生き残ることなんて出来ない。



自分が若手だったころに学んだ『3つのC』。



『Confidence』

『Concentration』

『Control』



以前、ブログやコラムでもこれは取り上げて書いたけど、この3つ

が揃ってはじめて生き残ることができる。



よく相場をギャンブルっていう人がいる。

それは違うと思う。

自分だって20年近く勝ち続けられた。

この世界がただのギャンブルならそんなことはなかったはずだ。



そんな仲間は何人もいる。

それでも時代の変化や環境の変化に適応するべく、今は自らを変化

(進化)させなければいけないときに差し掛かってる。



相場は自然と同じ。

謙虚に相場と向き合い、畏れを知り、学ぶこと。



最近、ダイビングをやって感じること。

普段は信頼できるプロのガイドやインストラクターが一緒だから安

心して潜れる。

そして心地よく潜れるところに連れて行ってくれるからこそ楽しさ

を満喫できる。

でもきっと一人で潜れば不安だらけになるだろう。

まだ海の奥深さや怖さを知らない自分では。

それでも一人で好き勝手に潜るとするなら…それは勇気ではなく無

謀だ。

それを度胸という一言で正当化するのは間違いだろう。

その無謀で何かを失うのは勝手にすればいいけど、自分たちが失う

ものは他人様のお金だということを忘れてはならない。



相場も同じなんだよ…。

何度も伝えたつもりだったのに。

【相場雑感】焦りばかりが…

こういう上昇相場になってきたとき地場証券のディーリング部門でよく起きること。




『なんでこんなに相場が上がっているのにそんなに儲かっていないんだ?』




そういうセリフをマネジメントがぼやく。


これは自分自身が見ているディーリング部の運用手法を理解していない証拠。




相場が上がる=儲かる




なら




相場が下がる=損する




それはロング・オンリーの運用をやっている場合だ。


ほとんどの日系証券会社では日計りを中心とした短期運用をやっている。

そういった運用の場合、その収益は短期のボラティリティや出来高に比例する。

相場が上がったから儲かって当たり前という話ではないのだから。


中長期でポジション引っ張れるところはまだそれなりに数字を伸ばしているだろうが、そういった体制が出来ていないところはそれほどは伸びていないはず。




こういった状況ではディーラーの多くも自身の中に焦りが生まれる。




『相場が上がっているのに取れていない。』


『もっと儲けないと。』




その結果、焦りからつい高値で手を出して押し目で投げたり、ついロットがでかくなって大振りになり思わぬロスが出てしまったり…。

短期運用においては『リズム』が最も重要。

自分自身のメンタル・コントロールさえしっかり出来ていれば、相場が活況になり出来高やボラティリティが増えてくれば焦らずとも収益機会は活かせるはず。

ただ『乗り遅れた』という焦りからリズムを狂わせるとこれは最悪の結果につながっていく。




周囲が儲かっているのに自分が儲かっていない→なんとかしないとと焦る→焦りからポジションを取っているからコントロールを失う




短期運用の強みは下げ相場でも上げ相場でも一定のリターンを出し、最小限のポジション・リスクと資金効率にある。冷静にコントロール出来ていれば市場が活況になり、出来高・ボラティリティが増加するに従いそれなりには収益も伸びていくはず。




マネジメント側の人間もそれを十分理解し、変に運用者にプレッシャーを与えないこと。

そしてこういった相場でしっかりとチーム収益を伸ばしたいのなら運用手法(ストラテジー)の多様化をチーム内で推し進め、それを管理できるだけの体制を構築することがマネジメントの仕事。




・月末ポジションゼロにしなければならない。

・オーバー・ナイト禁止。

・個別ポジションで一定比率評価損出たらロスカット。

・オプションは難しくて危ないからやらせない。

・夜間取引は出来ない。

・海外ものや他商品ができない。




こういったことは全てマネジメントの力不足によるもの。

自己資本規制比率が十分に高いのに過度にリスクを抑制させて運用をしばったりするのは間違いだし、十分な資金力はないが優秀な運用チームを持っているのなら運用会社化して他から運用資金を受け入れればいい。


個別ロスカット・ルールなんてひと銘柄で買うか売るかしか考えないやり方でしか通用しない(挙句の果てにナンピンして簿価下げたり、手前で切って買い直せばOKとかナンセンスなところもある)。それではロング・ショートや何らかのストラテジーを元にポジション・トレードすることは出来なくなる。




夜間取引が出来ないということは夜間に何か起きてもリスク・ヘッジが出来ないということ。つまりオーバーナイト・リスクは取りづらくなり、運用者も自ずと日計りに偏っていく。


海外ものや他商品も含めてグローバル・マネーは流れている。その中でいつまでも日本の小さな器の中でだけ戦わせても大きな視点を持った運用者は生まれない。




地場証券のディーリングが低迷し、追い込まれてきたのはディーラー自身のスキルの低下やアローヘッドのせいだけではない。

恐らくマネジメントが企業や部門としての努力を怠ってきたのが最大の要因だと思う。




『あれは出来ない、これは出来ない。』




ではなく、どうすれば出来るのかを考えるのがマネジメントの仕事。

それを多くの日系証券は放棄してきた。




先日のセミナーで講師の方が使っていたダーウィンの進化論。




『最も強いものや最も賢いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残るのだ。』




この言葉を今一度マネジメントのみなさんが認識する必要があるのではないだろうか。


儲からなくなったのをアローヘッドのせい(環境の変化のせい)にするのは間違い。


その変化に適応するべく努力し、自らを変化させられるもの(=進化)が生き残る。


変化のせいにして努力を怠るものは淘汰されるのみ。




そして自分自身の部門の運用手法(ストラテジー)をしっかりと理解し、分析し、相場が上がっているのにそれほど収益が伸びないと安直な考えで運用者に妙なプレッシャーを与えないようにしてほしい。


もし日計り主体でやらせていてそのセリフが出てくるのなら、それはあなたが自分の部下たちの運用手法を理解していない証拠ですから。

そしてそういう状況が嫌ならもっと異なる手法を実現できる環境と人材を得ることこそがあなたの仕事なのだと思います。

【相場雑感】電機ボロボロ…

電機株の凋落ぶりがあまりにもひどいのでちょっと振り返ってみま​した。

ITバブルの時は『ハイテク株に非ずは株に非ず』ぐらいの勢いで​我が世の春を謳歌していたのですが…。


電機セクターの下落率状況



           ITバブル高値 現在値   下落率

6701 NEC        3450     153    -95.57%

6702 富士通      5030     390    -92.25%

6758 ソニー      16950     1343    -92.08%

6752 パナソニック   3320     593    -82.14%

6753 シャープ     2675     533    -80.07%

6501 日立       1709     403    -76.42%

6502 東芝       1280     321    -74.92%

6503 三菱電機     1244     684    -45.02%



ちなみに日経平均株価の同時期の高値は20833.21円。現在​▲57.34%の下落率になっています。それより下げ渋っている三菱電機はずいぶん頑張っている印象です​ね。一方で、NEC、富士通、ソニーはボロボロ。どれもITバブル時には中核銘柄だったのに…。

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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