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【ビジネス】ディーラーというお仕事

最近はFBばっかりで、とんとご無沙汰でしたが、

久しぶりに書いてみよーかな、と思うことがあったので…(^^ゞ





日系地場・中堅証券のディーリング撤退が相次いでいる。

この1ヶ月あまりで5社前後。

恐らくまだまだ出てくるだろう。

来年3月までには…考えるだけで寒くなる(-_-;)



こうなってしまったのはディーラーだけのせいではない。

どちらかというより個々のディーラーよりも、マネジメントが真剣に運用ビジネスと向き合ってこなかったからだと感じている。



今、この会社に入り、多くの体制変更をお願いしてきた。

新しいことをやっていくには必要だからだ。





マーケットの変化。

運用環境の変化。



こうなることは真剣に運用を考えていれば見えていたはず。

2006年あたりからその傾向は出ていたのだから。



東京時間でのボラティリティ低下。

市場参加者の偏り。

収益機会の低下。

取引所システムの高速化。

それに伴うHFTの台頭。

etc…。



そういった市場変化に真剣に向き合い、運用の在り方を考え、一カイ二ヤリのみに依らない運用体制の構築、日本国内市場のみに依存しない売買体制、24時間化への対応、多様な商品への対応…。



やるべきことはいくらでもあった。

2007年にA証券所属だったとき、上にあげた『ディーリング部改革案』にはそれを全て書いていた。

最終的に証券自己という形だと適応できないのなら、ディーリングのファンド化も目指すべきだとも。



この3月中旬にこの会社に入社して必死に色々と取り組んでいる。

管理部門の動きは恐ろしいほど緩慢だし、非協力的と感じることも山のようにある。

でも彼らの協力なくしては前に進まない。

だから一生懸命訴えかけて、自分で出来ることは全てやってきた。

一ディーラーがやるようなことではないかもしれないが、それが必要だったから。



市場が構造変化し、収益機会が激減していくのが見えている中で、これといった手を打ってこなかったのはマネジメントの怠慢だ。

運用を研究し、新しい手法や、多様な商品、時間…そういったものへの研究開発投資を怠ってきた結果、収益が低迷していき、結果撤退に追い込まれていっている。



やるべきことが分かっているのに…。

出来ないと決めつけている。

でも本気で変えようと思えば変えられること。

変わらなくても生き残り続けられるなんてことはない。

運用者も企業も。



常に時代は変化する。

アローヘッドの稼働は時代の変化であり、当然の変化だ。

そのせいで儲からなくなったのではなく、それへの対応を怠ってきたからそうなっただけのこと。



これからも相次ぐだろうディーリング撤退、廃業。

淘汰はしょうがない。



でも生き残る努力をせず、ただ消えていく…それでいいのだろうか?

日本の運用、その担い手となる若いディーラー達の将来はどうなるのだろう?

潜在的には力のある日本の金融市場がいつまでもこんな状態でいいのだろうか?



一度真剣に考えてみてほしい。

世界有数の個人金融資産を誇るこの国になぜジョージ・ソロスもウォーレン・バフェットもいないのか。

運用ビジネスを活性化させ、金融資産の受け皿になりえる運用組織がいくつも生まれ、金融が活性化すれば日本は変わる。それほどの資源(金融資産)を日本は持っているのだから。





あともう一つ言いたいこと。

ディーリング管理の皆さん。



『損を出すな。』



というぐらいならディーリングやめた方がいいです。

リスクを取るからリターンが生まれる。

リスクとリターンのコントロールをするのがプロ。

一定のルールの下で任せられないのなら、その部は廃部に向かってまっしぐらですよ。



会社(投資家)としての損失許容限度額をしっかりと認識し、それに適合した形でリスクを付与し、その範囲内でコントロールされている限り、あまり余計な抑え込み方はしない方がいい。



リスクを抑え込めばリターンは減る。

結果として儲かってもコストを吸収できないようなディーリング部が増えた。

赤字になっているから人を切る。

基礎インフラコストは大きくは減らないから、結果としてより赤字がひどくなる。

そして最後は撤退。



お定まりのコースです。

どんなに稼ぐ力を持っているディーラーも、過度に抑え込んだり、リスクを取らせなければ、力を失うもの。



自分は過去に月間2億円以上の利益を何度か上げている。

最大損失は6400万円程度。



そんな自分がある会社に移籍し、たった200万円の損失を出しただけで



『空気読んでくれ。』



と言われたことがある。



その後、自分は100万円程度の損失でも指が震えるようになった。

その会社を辞めるまで、何度も自分はここにいたらプレーヤーとしてつぶされると感じたものだ。



ディーラーをつぶすのには刃物はいらない…(-_-;)

おかげでリハビリ大変だったんだから。



(適正な)一定のリスク、それに対する(適正な)期待リターン。

そしてそのリスクとリターンをコントロールするのが運用のプロ。



抑え込むのは簡単。

それと引き換えに得られるはずの収益も失い、コストも賄えなくなる。

今こそ、ディーリングのマネジメントをやっている人たちが、しっかりとリスク、リターン、コストについて認識を改めないと、その先には撤退・廃業しかなくなる。



儲からないのをディーラーのせいにするだけではなく、儲けづらい環境になっていることを認識し、より収益機会の多い運用手法や時間帯、市場へ機動的に対応できるように環境を整備するのがマネジメントの仕事だと思う。



お金をかけなくても、新しいことは出来る。

実際に今度自分のところで取り組むことは、初期費用ゼロ、ランニング費用ゼロだ。



ここから1~2年は生き残りをかけた戦いになる。

少しでも多くの運用部門が生き残れるようにし、若い運用者が育っていく土壌を守りぬく…そんな気概を持って全力で仕事にぶつかっていきたいと思う。

【ビジネス】大証の板寄せ直前における大口注文取消等の一部禁止について

http://www.ose.or.jp/news/20398




昨日、大阪証券取引所から板寄せ直前における大口注文取消等の一部禁止が発表された。



寄り前に大量の注文を出しておいて、他の市場参加者を意図的に誘導し、大証よりも先に売買が開始されるSGXなどで、より優位な価格で注文を執行する。



いわば相場操縦的な商いが行われるのを防ぐための措置だ。



実際には東証とも連携を取る必要がある。

しょっちゅう行われていることだが、225型のインデックス注文で下までの指値売りや上までの指値買い、成り行きも含めて現指数の寄り前状況を操作し、価格誘導を行っているヤツもいる。



当然、当人に聞けば裁定取引の一環として…というのだろうが、寄りつき直前に取り消すあたり、やはり悪質といわざるをえない行為だろう。



ザラ場においてもまだまだ『見せ玉』的な商いは非常に多く、特にアルゴが増えてから、アルゴだから…と訳の分からない理由で過当な数量の発注・取り消しが黙認されてきた。



かつて人間がやって相場操縦行為として処分されたものが、プログラム化されたことで何故か追い切れなくなっている。



そういった悪意を持ったプログラムの存在は、関係者の間では十分に認知されていながら、ブラックボックス化されており、その悪意を立証しづらくなっている。外形的基準による分析・監視をもっと強化しないといけないと思う。注文執行の処理だけを高速化するのではなく、その監視システムも高速化し、市場をしっかりと守ってほしい。





健全な市場育成にはまだまだ課題は多い気がするが、それでも今回の大証さんの発表は一歩前進だ。



こういった決断がなされた背景には、大証さんが様々な市場参加者の声に耳を傾け、それを受け止めたことがある。

7月ぐらいだったかな、大証さんが実施された日系証券ディーラーを対象としたラウンド・テーブル。

自分もその準備をいくらかお手伝いしたのだが、それによって各社のディーラーや管理者から上がった声の一つが届いた。



市場は、取引所だけではなく、取引参加者や監督当局…みんなで創っていくもの。

かつてのディーラーは新しい商品や市場の育成に、マーケットメイクという形で流動性を積極的に供給し、市場育成の担い手として機能していた。



契約化が進み、個人主義的な運用者が増えた昨今、無駄な労力、コスト、リスクを嫌い、市場育成に対する責任をディーラー自身も放棄してきた面がある。会社にも余裕ないしね。



でもこれから十年後の将来、日本の市場が健全かつ面白くあり、一般の投資家も参加できるようにあるために、みんなで知恵を出し合って、少しでもよくしていけたら…なんて思うのです。

【相場雑感】ソブリン・リスク

『ソブリン・リスク』



国家の信任が今大きく揺らいでいる。



ギリシャに端を発したこの問題は、欧州に広がりをみせつつある。



EUが多重債務国を救済する姿勢をしっかりと打ち出したことで、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルといったところのCDSの水準は小康状態に。





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ギリシャCDS



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アイルランドCDS



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ポルトガルCDS



しかし、次の標的とされたのはイタリア、スペイン。



ECBはこれらの国債の買い入れを実施し、債券価格自体は上昇。


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イタリアCDS





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スペインCDS



しかし、それで市場は落ち着いたわけではなかった。

ジワジワと上昇を続けているのがEUの中心であるドイツ、フランスのCDS。

多重債務国を救済するコスト・リスクを市場は織り込み始めている。





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ドイツCDS



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フランスCDS



米国は債務上限引き上げには合意出来たが、S&Pによって最上位格付けから引き下げられてしまった。



何故か、通貨の世界においては日本は『安全』とされて円が買われる状況が続いているが(マネーサプライによる部分が大きいのだろうか、自分は通貨のプロではないので…)、日本こそ財務状況は危機的水準。このままいくと近いうちに1000兆円に乗ってしまいそうな勢い。



対岸の火事ではない。



このまま進めば、いつか日本にもその日は飛び火する。



これまでも危機はいくつもあった。



日本では90年代後半に山一證券や北海道拓殖銀行の破たん。



米国ではリーマン・ショック。



でもそれを乗り越えてきたのは国家が最後の救い手として存在しえたから。



今やその国家の信任が揺らいでいる。



誰がその救い手になれるのだろうか?



今は強いリーダーシップ、そしてゆるぎない協調が必要だ。

【ビジネス】厳しいですね

マーケットは非常に厳しい状況を迎えつつあります。



そんな中で中堅証券の一社がディーリング業務撤退という噂を耳にしました。

他の証券でも検討中の会社があるという話はいくつか聞いています。



下期からそういったことが増えてくると予想はしていましたが、予想以上に早い…そんな印象です。



もちろん稼げないのはディーラーに問題がある。

収益を上げるのが仕事なのだから、言い訳はできません。



一方で、ただディーラーが稼げないことをマネジメントが責めるだけでいいのか?

ちょっと疑問です。



ディーラーはあくまで戦場で戦う兵隊です。

その兵隊が戦いやすいような環境を整備するのはマネジメントの仕事。

そして市場の変化に適応しうる環境を作り、兵隊がより戦いやすいようにしなければならない。



東京時間に動きが乏しくなり、HFTの台頭により、手動による短期運用はかなり難しくなっているのは明らかです。

市場環境は大きく変わろうとしている。



にも関わらず、コンプライアンスもリスク管理もシステムに依存しきり、そのシステムが対応してくれないから出来ないとか、お金かかるから出来ないとか、そんなことばかり言っている会社が多いのが現状です。



兵隊が戦いやすいように戦略を練るのがマネジメントの仕事。

時間軸の多様化や対象商品の多様化は、市場の変化に適応するためには必要な努力なのです。



結局、そういったマネジメントの対応・決断の遅れから、日系証券のディーラーは昔変わらず同じ日計りに偏った運用を続けることになり、結果として収益が低迷し、そして撤退していく。



開国によって高性能の銃火器を持った海外勢が攻めてきているのに、いつまで刀で対抗させようというのでしょうか?



もちろん過剰な規制や管理を強いている監督官庁にも、機動的な運用が出来なければ収益が低迷し、結果参加者が減少し、市場の衰退につながっていくということを理解してもらわなければなりません。



儲からないことをただ相場のせいやディーラーのせいにするのではなく、マネジメント側にももっと考えるべきこと、対応するべきことがあるのだということに気づかなければいけないのではないでしょうか?



一部の監督サイドの方には、証券自己がアルゴを使うことや、SORを使うことをいかがなものか?と言う方がいらっしゃるようです。

でも時代が変わったのです。

電話がなかった時代。そしてようやく電話が出来たとき、それを使うことを規制するのはおかしな話です。

電話からインターネットへの変化もそう。

時代が変わり、環境が変わろうとしているのです。

それに対応しなければ、生き残れないのです。

日本の会社、運用者をつぶしたいのならそれでもいいですが、もう少し大きな視点に立って、日本の活力を取り戻すために何が必要なのか、そうでないのかを考えてほしいものです。



正直、もう間に合わないかもしれない…と感じることが多い今日この頃です。

でも日本の運用者、運用ビジネスを活性化させることが、日本にある大きな資源ともいえる個人金融資産の活性化にもつながるのだと信じています。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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