投資詐欺、ポンジスキーム…なくならないですね。
昔からあるスキームです。
前者は完全にポンジスキーム、後者は運用はやっていたけれど、運用が全然ヘタクソで損が出続けているのに関連会社とグルになった形で運用実績を偽り続け、年金などからお金をかき集めていた事例です。
もしかすると若い人たちはこういった事件を知らないかもしれません。繰り返してはいけないと思いますし、伝えていくのはおじさんたちの責任かもしれませんね。
残念ながら、その後も個人投資家が巻き込まれたポンジスキーム、投資詐欺は後を絶ちません。
最近特に多いなと感じるのは無登録業者と呼ばれる無認可・無登録の業者による詐欺事件です。
自分もファンド運用を行う運用会社の経営者として、投資していただく、お金を預けていただく立場の人間です。
その人間がこんなこと言うのは矛盾しているかもしれませんが、大切なお金を預ける相手を簡単に信用しないでください。
月4%の利回り確定で、毎月分配する?
単純に年間で48%を投資家に返すことになります。
運用をしている会社や、勧誘を行っている人員の人件費、会社の運営コスト、〇〇会などの派手なイベントのコスト…etc。
そんだけ運営にお金かけてて、さらにそれだけ投資家に返すとなったら、年間で何%のリターンを上げなければいけないか?
それを毎年続ける?
ありえません。
そんなに美味しい話はありませんし、簡単に儲かるなんて仕組みはありえません。
我々もより高いリターンを目指して運用を行っていますし、それを再現性のある形で安定的に出来るようにと様々な形でその実現を目指して必死に取り組んでいます。
それなりに信頼を与えてくださる投資家に巡り合えたから、なんとか頑張ってこれていますが、それでも経営や運営のコストはシビアにやっています。
ヘッジファンドの世界では「5年の壁」というのがあると聞いたことがあります。
設立して5年を越えられるかどうか、そこがかなり高いハードルになっていて、閉鎖に追い込まれるファンドも少なくないという現実があります。
それぐらい厳しい世界なんです。
お金を預ける場合、必ず相手(その投資商品)が金融庁などに届出を行い、金融商品としての法的要件を整えているかどうかを確認してください。
そして勧誘を行ってきた人が、金商法上のライセンスを保持している人かどうかを確認してください。
金融庁は下記のサイトで業者の一覧を掲載してくれています。
業として、投資勧誘によってなんらかの利益を得たり、販売すること、他人の資産を預かって運用することは、ライセンスや認可が必要な業となります。
そういった登録や認可を受けているところは、定期的に金融庁や地方財務局(関東財務局や近畿財務局)などによる検査、自主規制団体による検査などを受けており、厳しい管理監督の下で金融業を営んでいます。
それは金融業を営む者にとっては当たり前のことなんです。
それは日本だけではなく、私が業務を行っているシンガポールにおいても同様です(シンガポールの金融庁局はMAS(Monetary Authority of Singapore)、ファンドがケイマン諸島であればCIMA(Cayman Islands Monetary Authority)という金融当局の監督下になります)。
それすらもちゃんとやっていない人たちを簡単に信用してはいけません。
最近は〇〇権の販売?とか、金融商品ではないとした抜け道的なスキームもあるようですが、実質的には金融商品と同じ中身である以上、そんな特殊なスキームを使ってお金を集めていることに疑問を持ってください。
当局による検査は厳しいものですし、ここ数年はAML(アンチマネーロンダリング)やサイバーセキュリティへのチェック基準も相当厳しいものになっており、そのために毎年テストを受けなければいけなかったり、コストもかけて体制を整えたりと、金融業をちゃんと営むためには様々なコストや負担も強いられます。
業として他人のお金を預かるということは、それだけ責任の重い仕事であるということでしょう。
派手なものに惑わされないでください。
いい暮らしをしたい、少しでも安定して収入を増やしたい、そういった欲求やニーズがあるのは当然です。
ただそこにつけこまれないでください。
私達、資産運用を業として担っている人はみな、少しでもいいリターンを投資家にお返しできるように、それぞれがそれぞれのやり方で懸命にマーケットと向き合い、全力を尽くしています。
それでもそんな美味しいリターンは…残念ですが、無理でしょう。博打的なリスクの取り方をするか、極端なマーケットでうまく乗り切れたとして、単年度で数十%のリターンを出すことができたとしても、それは再現性には欠けると言わざるをえません。来年も同じリターンが出せるとは思わないでくださいと、自分は投資家にはそう伝えるでしょう。そしてそれだけのリターンが出る可能性があるということは、ドローダウン(損失)が出る可能性もあるという現実も伝えなければなりません。
マドフのポンジスキームはNetflixでもドキュメンタリーになっています。
こんな経歴の人物で、金融の世界でも有名な人が行ったポンジスキーム。
ここでは金融業者も結果として絡んで投資家への販売を行っていました。
監督責任を負うSECですら、彼の経歴もあり、結果として長年見過ごしてきてしまったというものです。
ファンドの運用においては、様々なスキームがあります。
大切なことは、各関係する企業がそれぞれが所属する国や地域でライセンスや認可を受けて業を営んでいること。
またその監査(Auditor)や会計(Administrator)、資産管理(Trustee、Custodian)が第三者機関によって行われていること。
どういった投資手法、運用手法でそのリターンを実現しているのか。これはまことしやかな言葉で誤魔化されてしまう方も少なくないかもしれません。知ったかぶりして専門用語並べ立てれば、一般の方々にはチンプンカンプンで「なんかすごそうだ」になってしまうかもしれませんから。それでも納得できるまで「知る努力」をしてください。
これらがきちんと示されること。なかなか個人でその裏を取るまでは難しいかもしれませんが、最低限の確認事項です。
また「絶対儲かる」「確実に儲かる」という言葉が出てきた時点で、その勧誘する者が金融業者であっても信頼してはいけません。「断定的判断の提供」は金商法で禁じられています。それを遵守できないような営業マンの言葉は信じてはいけませんし、そういう話を簡単にする人を信じてはいけません。
また高金利の借金をしてまで投資させるというのは言語道断だと思います。
返さなければいけないお金で、リスクのある運用にお金を投じる時点で、負けられない勝負になります。
さらに金利でその負担は確実に増え続ける。
運用は確実ではない世界(詐欺師は確実と言うかもしれませんが)です。
投資や運用には常にリスクが伴います。実際に自分自身も運用者として20年以上やってきましたし、多くの実績ある運用者も見てきました。そして淘汰・脱落していく人もそれ以上に沢山見てきています。
厳しい世界ではありますが、きちんとマーケットと向き合い、リスクと向き合うことで、一定のリターンを持続的に得ることは可能だと考えています。
そしてそれが人々の将来の資産形成や生活を豊かにするものに繋がるようにしていきたいと願っています。
個人金融資産2000兆円超を誇る日本という国が、それを活かしていったとき、まだまだ世界でトップレベルの存在感を示すことができると信じています。
ずっと運用の世界で生きてきた者として、その受け皿になりえる未来の資産運用を担う人材を一人でも多く世に送り出すこと、彼らが社会に役立つ存在として認知されていけるようにしていくことを自分のライフワークだと思って取り組んでいます。
これが詐欺の温床になっていることは、この世界で生きている一人としてこんなに残念なことはありません。
美味しい話や派手なイベント、周囲に流されることなく、ご自身の財産や未来を守るためにも、お金を預ける前に、まず理解する努力をしてみてください。その知識があなたの身を守り、将来の資産形成にきっと寄与するはずですから。